50kW以上の電力を使用するには、高圧受変電設備(キュービクル)を設置し、高圧受電を行う必要があります。しかし、キュービクルの新規設置や更新には高額な費用が必要です。
そこで注目されるのが中古キュービクルの活用です。劣化が少なく品質が確保された中古キュービクルであれば、コストを抑えて新品同様に使用することができます。
安全性とコストパフォーマンスの両立を図りながら、適切な中古キュービルの選定・導入ができれば、顧客に対してより満足度の高い選択肢を提供できるでしょう。
この記事では、電気工事業者の方向けに、中古キュービクルの選定から導入、運用までの実践的な情報を説明します。
中古キュービクルの基礎知識
まずは中古キュービクルとはどのようなものか、基本的な情報を説明します。
中古キュービクルのメリット・デメリット
専門業者が取り扱う中古キュービクルは、最低限のメンテナンスは実施されているはずですので、受変電の基本的な機能は正常に動作する場合が多いでしょう。
しかし、経年による部品劣化の可能性や、最新の省エネ基準への適合状況には注意が必要です。変圧器はトップランナー制度により、年々効率化され、新しいものほど省エネ性能が高くなっています。また、近年は環境配慮の観点から、油入変圧器よりも高性能なモールド変圧器の採用も増加しています。このような性能面では、中古キュービクルは最新のキュービクルにはかないません。
中古キュービクルは、新品と比べて導入時のコストを抑えられることが大きな魅力です。ただし、各機器が劣化している場合もあり、メンテナンス費用は若干高くなる傾向があります。また、新品よりも早い段階で部品交換の計画が必要なため、ランニングコストが増加により、導入コスト以上の費用がかかる可能性もあります。
中古キュービクルを納品する場合は、顧客に対しこれらのメリット・デメリットを丁寧に説明するとともに、劣化状況を見定め、顧客の使用目的に応じた製品を選定しなければなりません。品質の悪い中古キュービクルを納品した場合、顧客からの信頼を失うことにもつながるので新品のキュービクル以上に慎重な判断が必要です。
寿命と経年劣化について
キュービクルの標準的な耐用年数は10~15年とされていますが、適切な維持管理により20年、25年以上使用されているケースも少なくありません。
ただし、温度変化の大きい場所での使用や、塩害地域での屋外設置、粉塵の多い環境、振動の多い場所での設置など、使用環境によっては劣化が促進される可能性があります。
このため、中古品を選定する際には、過去の設置環境や使用状況を詳細に確認することが重要です。特に、塩害地域で使用されていた機器を内陸部で再利用する場合などは、腐食状況の詳細な確認が必要となります。
キュービクル本体(金属箱)だけでなく、各遮断器・開閉器や変圧器など内部機器の劣化状況を確認することも必要です。劣化した機器があると、設置後すぐに交換や修理が必要となり、コスト面で不利になってしまいます。
中古キュービクルには技術力が必要
中古キュービクルには新品にはないリスクがあるため、取り扱う電気工会社にはより高度な技術力が求められます。
新品のキュービクルであれば、一定の品質を確保することができ、何か問題がある場合はメーカーの保証を受けることも可能です。しかし、中古のキュービクルは、自らの目で品質を見極め、条件に合った製品を選択しなければなりません。
中古キュービクルの販売業者では、多くの場合、一定のメンテナンスを施し、使用可能な状況で販売しています。しかし、その程度は業者により様々であるため、信頼できる業者を選択することが重要です。
また、一部の機器に劣化や故障がある場合は、機器の取替など必要なメンテナンスを行い、キュービクルを再生させなければならない状況も起こりえます。
このように、中古キュービクルを使用する場合は、新品以上に慎重な対応を求められるのです。
中古キュービクル選定のポイント
中古キュービクルを選定する場合、まずは条件に合った仕様のキュービクルを探すところから始まります。最初に使用条件などから中古キュービクルを探すポイントを紹介します。
設置環境との適合性確認
キュービクルを選定する際は、設置場所の環境条件を十分に考慮する必要があります。この点は、中古も新品も同様です。
設置場所は屋内か屋外か、さらに周囲温度や温度変化、湿度条件、粉塵や腐食性ガスの有無などの環境要因も確認しておきましょう。キュービクルの重量に対する床荷重の検討や、換気条件の確認も重要なポイントです。
また、設置スペースの制約や搬入経路の確保状況なども重要な検討項目となります。特に、既存建物への設置では、搬入経路の確保が課題となることが多く、分割搬入の可能性や仮設・重機の必要性なども事前に検討する必要があります。
設置場所の条件に合わせて設置可能なキュービクルの仕様を確認しましょう。
必要な電力容量の見極め方
キュービクルの選定にあたって適切な容量を選択することは、電力の安定供給と経済性の両面で重要です。容量が足りなければ想定している電気設備を稼働させることができず、容量が必要以上に大きければ無駄な消費となってしまいます。
負荷設備の容量算出にあたっては、既存設備の実測データ分析を行うとともに、将来の増設計画も考慮して電気容量を決めましょう。新設のため既存設備がない場合は、使用予定の機器を確認し、必要な電気容量を計算する必要があります。また、力率改善の必要性についても検討が必要です。
容量の余裕率は一般的に20~30%程度が目安とされていますが、用途や将来計画によってはさらに大きな余裕を持たせることも検討します。特に、生産設備の増設が予想される工場などでは、余裕率の設定に慎重な判断が必要です。
メーカーや製造年による特徴
キュービクルを製造したメーカーによって、部品の調達のしやすさやメンテナンスのしやすさに違いがあります。中古のキュービクルでは、新品以上にメンテナンスが重要になるため、重要なポイントと言えるでしょう。
そのため、できるだけマイナーなメーカーは避け、現在でも製造が続いているシリーズのキュービクルを選定すると、メーカーのサポートも受けやすく安心です。
製造年を確認することにより、製造からの経過年数を確認でき、劣化の状況を知る目安になります。標準的な耐用年数は10~15年とされるため、あまりに古いキュービクルの場合はより慎重に劣化状況を確認した方がよいでしょう。
さらに、製造年によって部品の供給状況に大きく影響します。古い機種では純正部品の入手が困難な場合があり、代替品や互換品を使用する必要が出てくる可能性があります。
導入・運用コストの検討
中古キュービル導入の総コストは、本体購入費用に加え、輸送費用、設置工事費、試験・検査費用、諸経費などで構成されます。
中古キュービクルは、新品と比べ本体購入費用が安価に抑えられますが、その他の費用は条件により変動します。そのため、導入にかかる総額を計算して新品のキュービクルと比較する必要があります。
また、中古キュービクルは運用段階のランニングコストが増加する傾向があります。定期点検費用、部品交換費用、補修費用、電力損失などを考慮し、新品のキュービクルに対しどの程度増加するか想定しておきましょう。
これらの条件を元に、新品のキュービクルに比べコストメリットがあると判断される場合に、中古キュービクル導入を検討するとよいでしょう。
中古キュービクル購入前の重要チェックポイント
設置場所や電気容量など必要な仕様に合致するキュービクルが見つかったら、購入前に劣化状況などをチェックする必要があります。この点を怠ると設置後すぐに故障などのトラブルが発生することにもなりかねませんので、しっかりと確認しましょう。
外観検査の重要性
外観検査は中古キュービル購入の第一段階として非常に重要です。
キュービクル本体(金属箱)の状態確認では、単なる錆や腐食の有無だけでなく、その進行度合いや原因もしっかりと確認しましょう。特に接合部や溶接部周辺の腐食状態は、防水性や構造強度に直結するため、入念な確認が求められます。
内部機器の状態確認では、変圧器や開閉器、保護継電器などの主要機器の状態を詳細にチェックします。特に電力ヒューズ周りの変色や、配線の被覆劣化、端子部の緩みなどは、重大な事故につながる可能性があるため、慎重な確認が必要です。
ただし、内部機器は、必要に応じ設置前に交換することもできます。全体の程度が良ければ一部機器のみを交換し、十分使用できる場合もあります。
各種試験データの確認
キュービクルの性能や劣化状況を確認するには、目視だけでは不十分です。目で見ることができない部分は各種試験により劣化状況を判断する必要があります。
中古キュービクルの販売業者に依頼し、絶縁抵抗試験、絶縁耐力試験、各種の継電器の特性試験など、各種試験のデータを確認するようにしてください。
また、将来的にトラブルになることがないよう、これらの試験データは必ず書面で保管しましょう。
法規制・安全基準の適合状況
電気に関する安全基準は、必要に応じ年々見直しがなされています。中古のキュービクルでは、現行の安全基準に適合しない場合もあるため、十分な注意が必要です。
また、現在では設置が禁止されているPCB(有害物質)を使用した機器が含まれている危険性もあります。
これらは法令等の規制対象であるため、コンプライアンス意識のある販売業者であれば取り扱うことはありませんが、購入する側でもきちんと確認することが大切です。
まとめ
中古キュービルの導入は、コスト削減と環境配慮の両面で有効な選択肢となっています。特に導入コストを抑えられる点は魅力的であり、適切な提案ができれば受注率アップにもつながるでしょう。
しかし、その成功のためには、徹底した事前調査、信頼できる販売業者の選定、適切なメンテナンス計画の策定、予備品の確保といったアフターケアが必要不可欠です。
新品にはないメリット・デメリットを理解し、中古キュービクルを正しく活用しましょう。
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