事業所や工場、商業施設などで使われる高圧受電設備「キュービクル」は、電力を安全かつ効率的に受け取るための重要な装置です。高圧の電気を受け入れ、施設で使える低圧に変換する役割を担っているため、設置や機器の選定には高い信頼性が求められます。
その中でよく耳にするのが「推奨品」や「認定品」という言葉です。しかし、推奨品と認定品は似ているようで異なる概念であり、消防法の適用条件などによってどちらを選定すべきか変わる場合があります。
この記事では、推奨品の定義、認定品との違い、選定時のメリットなどを解説していきます。
キュービクルにおける「推奨品」とは
まずはキュービクルにおける「推奨品」とは何かを見ていきましょう。
推奨品とは?
一般的にキュービクルの「推奨品」と言えば、日本電気協会(JEA)が推奨制度に基づいて審査を行い、信頼性・安全性・耐久性などの基準を満たしたと判断されたキュービクルのことです。推奨品のキュービクルには「推奨銘板」が取り付けられ、推奨品であることがわかるようになっています。
推奨品は、日本電気協会が定めたキュービクル式高圧受電設備推奨規程により審査され、主に以下の法令・規格に適合していることが確認されます。
- 電気設備に関する技術基準を定める省令
- 高圧受電設備規定
- 日本工業規格(JIS)
- 火災予防条例
日本電気協会が第三者機関として書類審査・現場審査を行い、キュービクル式高圧受電設備推奨規程に適合したキュービクルを推奨品として認定します。これにより、信頼性の高いキュービクルが普及し、停電や感電といった事故を防止することを目的にしています。
認定品との違い
一般にキュービクルの「認定品」と言うと、消防庁告示第7号に基づき、登録認定機関(日本電気協会)が認定を行った製品のことです。
消防法に基づき設置される消防設備(消火ポンプなど)には、非常電源の設置が義務付けられているものがあります。認定品のキュービクルは、この非常電源として使用することが可能です。
認定品のキュービクルで非常電源の要件を満たせる場合には、非常用発電機などの高額な電気設備を設置せずに済むため、大幅なコストダウンになります。
キュービクルの推奨品を選ぶメリット
推奨品のキュービクルには、様々なメリットがあります。
- 第三者機関の審査による信頼性の高い構造
- 製造工場における品質管理のチェック
- 火災予防上支障がないと認める構造と認められる
第三者機関の審査による信頼性の確保
推奨品のキュービクルは、第三者機関である日本電気協会が、各種法令・JIS規格などに適合し、さらに、火災予防条例等で火災予防上支障がない構造の条件を満たしていると確認したものです。
昭和43年にキュービクルのJIS規格が制定され、その翌年には推奨制度がはじまり、日本電気協会による審査が開始しました。それ以来、半世紀以上に渡って、信頼性の高いキュービクルの証となっています。
キュービクルの構造や品質について詳しくわからないという場合でも、推奨品を選定しておけば、信頼性の面では安心して良いでしょう。
製造工場における品質管理のチェック
推奨品として認められた後も、製造工場において、定期的に推奨基準を満たしているかの調査が実施されます。
第三者機関である日本電気協会単により、設計上の構造が推奨基準を満たしているというだけでなく、実際に出荷されるキュービクルが基準に達していることが確認されるのです。
このため、推奨品のキュービクルは、高い品質管理の元に製造されていると考えることができるでしょう。
火災予防上支障がないと認める構造と認められる
推奨品のキュービクルの最大のメリットは「消防長(消防署長)が火災予防上支障がないと認める構造」であるため、設置場所の制限が緩和されることでしょう。
- 屋内にキュービクルを設置する場合、キュービクル専用の室を設けることが省略可能
- 屋外にキュービクルを設置する場合は、建築物からの離隔距離が1m以上に緩和
例えば、屋内にキュービクルを設置する場合、通常は専用の室を設けることが求められます。しかし、推奨品であれば、不燃材料で区画された室など一定の条件下で、専用の室でなくとも設置が可能です。
また、屋外にキュービクルを設置する場合、通常は建物からの離隔距離は3m以上必要ですが、推奨品では1m以上に緩和されます。
これらの緩和により、推奨品でないキュービクルでは設置できないようなスペースでも、設置が可能になります。
キュービクルの推奨品のデメリット
キュービクルの選定時には、メリットだけでなくデメリットも把握しておくことが大切です。推奨品には以下のデメリットがあります。
- 製品価格が高い
- 特殊な構造に対応していない
製品価格が高い
キュービクルの選定時には、コストとメリットとのバランスを検討しなければなりません。推奨品は様々な規定を守るため、推奨品でないキュービクルよりも製品価格が高くなる傾向にあります。
キュービクルの価格は、使用する電気容量や付加機能などによって大きく変動しますが、目安として、一般的なキュービクル(標準品)よりも10〜20%程度は高額になると考えておくとよいでしょう。
ただし、設置条件の緩和もあるため、建築コストの削減や敷地の有効利用につながることもあり、総合的にはコストメリットがある場合もあります。
特殊な構造に対応していない
キュービクルには、通常よりもコンパクトなタイプや、運搬に便利な組立型など、様々な構造のものがあります。設置スペースや搬入ルートの関係から、こうしたキュービクルを採用したいケースもあるでしょう。
一方で、特殊な構造のキュービクルは推奨品の基準には当てはまらないケースも多く、推奨品にこだわると、こうしたキュービクルが候補から外れ、かえって足かせになってしまうこともあります。
推奨品のキュービクルにこだわりすぎることなく、状況に合わせて選定することが大切です。
推奨品のメリット!キュービクルの選定の参考に
キュービクルの推奨品は、品質保証や設置条件の緩和など多くのメリットがあります。特に、設置条件の緩和は、スペースの活用に大変有効です。
一方で、状況によっては推奨品以外のキュービクルを選定した方が良い場合もあるでしょう。推奨品にこだわることなく、あくまでキュービクルの仕様のひとつと考え、条件に応じた検討が必要です。
推奨品のメリット・デメリットを把握して、ベストのキュービクルを選定する参考にしてください。