高圧受変電設備・キュービクルを扱える電気工事士の年収は?

電気工事士の中でも、主に住宅や小規模店舗などの低圧電気工事のみを行う電気工事士と、高圧受変電設備(キュービクル)をはじめとした高圧設備を扱うことができる電気工事士では、需要も待遇もまったく異なります。

高圧の電気設備を扱える電気工事士は、高い専門性と重要な責任を担う一方で、その技術と責任に見合った報酬を得ることが可能です。

この記事では、高圧受変電設備・キュービクルを扱える電気工事士の年収やキャリアアップの方法などを説明します。

高圧受変電設備を扱える電気工事士の年収は高い?

高圧受変電設備・キュービクルの工事は、電気工事の中でも専門性が高い工事です。高圧の設備は、コンセントや照明器具など低圧の一般的な電気設備に比べて、危険性も高く、より高度な処理が必要となります。

そのため、高圧受変電設備・キュービクルを扱える電気工事士は、低圧電気工事のみを行う電気工事士と比べて、高い年収を得ることが可能です。

まずは、具体的なモデル年収で一般的な電気工事士と高圧受変電設備・キュービクルを扱える電気工事士の年収の違いを見てみましょう。

なお、ここで紹介する年収は、厚生労働省の調査や主要な人材紹介会社の求人データを参考にしたモデル年収です。地域や所属する企業によって差がありますのであくまで参考としてください。

一般的な電気工事士の年収実態

賃金構造基本統計調査(令和4年)によると、電気工事士の平均年収は約568万円です。日本全体の平均年収は約458万円のため、約110万円高いということがわかります。

しかし、一言で電気工事士と言っても、実際には経験年数や技術力、従事できる電気工事の規模や種類によって年収は大きく変わります。

新人電気工事士の場合、基本給与は月額18~19万円程度のスタートとなります。これに残業手当や各種手当を加えると、年収は320万円から350万円程度です。

中堅層になると、基本給の上昇や職務経験や資格の取得により諸手当が加わり、年収350万円から450万円の範囲となります。

ベテラン層では、職務経験や実務能力に応じた差が年収大きくなってきます。順調にキャリアアップできた電気工事士であれば、平均年収の約568万円を超える人も珍しくありません

現場の作業だけでなく施工管理ができるようになったり、より専門的な知識や技術を身に付けて他の電気工事士にできない作業ができるようになったりすることで、年収は順調にアップしていきます。

順調にキャリアアップしていくには、高圧受変電設備・キュービクルを扱えるようになることは大変有効と言えるでしょう。

高圧受変電設備を扱える電気工事士の年収

大手求人サイト「求人ボックス」のデータを参考にすると、高圧受電する電気工作物の工事ができる第一種電気工事士の平均月収は37.2万円(年収約456万円)となっています。もちろんこれは求人時点のデータなので、その後の実績によって年収はさらにアップしていくでしょう。

資格名一般的な年収
第二種電気工事士300万円~450万円
第一種電気工事士400万円~500万円

600V以下で受電する気工設備のみを扱える第二種電気工事士と、高圧受電する電気工作物の工事ができる第一種電気工事士では、平均月収で約4~5万円の違いがあります。年収にすると50万円以上の違いです。ボーナスなどを加味するとその差はより大きくなります。

ここから、高圧受変電設備・キュービクルを扱える電気工事士は、低圧電気工事だけを行う電気工事士に比べ、50万円~100万円高い年収を得ることができると言えるでしょう。

現在第二種電気工事士として働いている電気工事士も、第一種電気工事士を取得し、高圧受変電設備・キュービクルの工事ができるようになれば、年収アップの可能性があります。

高圧受変電設備を扱える電気工事士の将来性

高圧受変電設備・キュービクルを扱える電気工事士の将来性について、人材市場や社会情勢を踏まえて説明します。

できる仕事の幅が広がり転職・独立のチャンスも

低圧受電の電気設備しか工事できない第二種電気工事士は小規模な電気工事にしか従事することができません。その活躍の場は、主に住宅や小規模店舗などに限られます。

それに対し、高圧受変電設備・キュービクルを扱える第一種電気工事士であれば、中・大規模な電気工事にも従事することが可能です。

経済産業省がまとめている「令和2年度末自家用電気工作物設置件数」によると、全国に設置されている自家用電気工作物の数は、92万件以上にもなります。このうち、第一種電気工事士が工事に従事できる最大電力500キロワット未満の電気設備が全体の90%以上なのです。

高圧受変電設備・キュービクルを扱えるようになれば、できる仕事の幅が広がり、就職・転職できる企業も増えます。このため、将来のキャリアプランにとって非常に有利になることは間違いありません。

また、一人親方として独立し、ゼネコン・サブコンから仕事を請負う場合も、対応可能な仕事の量が全く異なります。このため、独立しても成功する可能性が高くなると言えるでしょう。

電気工事士の需要は増加傾向にある

近年の電気設備市場は、大きな変革期を迎えています。再生可能エネルギーの普及に伴う設備の新設、工場の自動化推進による電気設備の高度化、さらには既存設備の更新需要の増加など、市場は拡大傾向にあります。

一方で、高度な技術力を持つ電気工事士は、現在深刻な人手不足の状況です。高圧電気設備の工事ができる第一種電気工事士は今後約2万人不足するとも言われています。

このような市場環境の中、需給バランスの偏りによって、技術力の高い電気工事士の人材価値はこれまで以上に高くなるでしょう。

高圧受変電設備を扱うために必要な資格

高圧受変電設備・キュービクルを扱うことができれば、より高い年収を得られることがわかりました。しかし、高圧受変電設備・キュービクルを扱える電気工事士になるには、より高度な資格が必要です。ここで、高圧受変電設備・キュービクルを扱うために必要な資格を紹介します。

第一種電気工事士

電気工事士の資格は、電圧等によって取り扱える工事の範囲が決まっています。第二種電気工事士では、600V以下の低圧で受電する電気設備に限られ、高圧受変電設備・キュービクルを扱うためには第一種電気工事士の資格が必要です。

資格名できる工事内容
第二種電気工事士600V以下の低圧で受電する電気設備の工事
第一種電気工事士最大電力500キロワット未満の電気設備の工事

しかし、第一種電気工事士の資格を取得するには、試験に合格するだけでなく、実務経験などの条件を満たさなければなりません。

電気主任技術者

高圧受変電設備・キュービクルを設置すると、電気主任技術者を選任する必要があります。電気主任技術者は高圧受変電設備・キュービクルをはじめとした自家用電気工作物の運用・管理の責任者です。

電気主任技術者は取り扱える電圧等によって第一種、第二種、第三種の3つに分かれています。

資格名扱える電圧
第三種電気主任技術者5万V未満
第二種電気主任技術者17万V未満
第一種電気主任技術者17万V以上

電気主任技術者は電気工事を行うための資格ではありません。しかし、工事中も受電後は電気主任技術者が必要です。

また、キュービクルの設置工事などと併せての、その後の保守契約などを請負うことも可能になるなど、電気主任技術者の取得には様々なメリットがあります。高圧受変電設備・キュービクルを取り扱うのであれば、取得しておくと有利です。

高圧受変電設備を扱うためのキャリアプラン

高圧受変電設備・キュービクルの技術者として高収入を得るためには、段階的なキャリア形成が重要です。まず基礎となる電気工事の技術を確実に身につけ、その上で高圧電気の取り扱いに関する専門知識と技術を習得していきます。

第一種電気工事士には、実務経験などの取得要件があり、未経験者が取得することは不可能です。そのため、第二種電気工事士の資格を取得した後、実務経験を積みながら第一種電気工事士、の資格を取得していくのが一般的なキャリアパスとなります。

第一種電気工事を取得することで、高圧受電する電気設備の工事を行えるようになります。そこから高圧受変電設備・キュービクルの工事に従事して、経験を積み、知識や技術を身に付けることが必要です。

さらには上位を目指すのであれば、第三種電気主任技術者や施工管理を行える資格の取得も有効です。

これらの資格取得と実務経験の蓄積により、より高度な案件を任されるようになり、それに伴って収入も上昇していきます。

まとめ

高圧受変電設備・キュービクルを扱える電気工事士は、低圧電気設備の工事のみを行う電気工事よりも高い年収を得ることが可能です。

高収入は、専門性の高さと責任の重さに裏付けられています。そのため、キャリアを築くためには、計画的な資格取得と実務経験の蓄積が必要です。しかし、その努力に見合った報酬を得ることができます。

また、市場の拡大と技術者不足という環境要因から、将来性も高く、現在の年収以上に魅力的なキャリアと言えるでしょう。

電気工事士としてキャリアアップを目指すのであれば、第一種電気工事士の資格を取得し、ぜひ高圧受変電設備・キュービクルの工事に挑戦してみましょう。

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