PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、かつて電気機器の絶縁油などに広く使用されていました。しかし、その有害性が明らかになり、現在は製造・使用が禁止されています。
高圧受電設備であるキュービクル内の変圧器やコンデンサーなどには、PCBが含有されている製品が多くあり、法律に基づく適正な処理が求められています。
本記事では、キュービクル内PCB含有機器の調査方法から適正な処理方法、処理費用、専門業者の選定ポイントまで、PCB処理に関する一連の流れを解説します。
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目次
PCBとは何か
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、熱に強く、電気絶縁性に優れ、化学的にも安定した性質を持つ人工の化学物質です。これらの特性から、1950年代から1970年代にかけて、変圧器やコンデンサーなどの電気機器の絶縁油、熱媒体、感圧紙などに広く使用されていました。
しかし、発がん性やホルモン作用、神経発達への影響など、さまざまな健康リスクが指摘されています。さらに、PCBは分解されにくく環境中に長期間残留する上、生物の体内に蓄積されやすい性質があり、大変危険な物質なのです。1968年に発生した「カネミ油症事件」は非常に有名でしょう。
こうした背景から、日本では1974年にPCBの製造・輸入・使用が原則禁止となり、2001年に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB特別措置法)が制定されました。また国際的にも、2001年に採択された「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)において、PCBは廃絶対象物質に指定されています。
PCB特別措置法と処理義務
PCB特別措置法は、PCB廃棄物の確実かつ適正な処理を推進するための法律です。この法律に基づき、PCB含有機器の所有者(保管事業者)には様々な義務が課せられています。
事業者の保管・処分義務
PCB含有廃棄物を所有している事業者は、適正に保管するとともに、定められた期限内に処分する義務があります。
PCB含有廃棄物を保管する場合は、特別管理産業廃棄物責任者を指定し、PCBが漏洩しないよう専用の容器に入れ、立ち入り禁止措置や所定の掲示などを行う必要があります。一度保管を始めると、処分まで原則として移動はできません。
処理期限は、PCB濃度や機器の種類によって異なりますが、期限内に処理が完了しない場合、改善命令や罰則が適用される可能性があります。
特に、高濃度PCB廃棄物については、最終的な期限が2023年3月31日にすでに終了しました。そのため、高濃度PCB廃棄物が発見された場合、速やかに自治体に届出を行い、対応しなければなりません。
低濃度PCB含有廃棄物の処分期限は、2027年3月31日です。該当する機器を保管している場合は、期限までに処分しなければなりませんので注意しましょう。
報告義務と届出
PCB含有廃棄物の保管事業者は、毎年度、PCB廃棄物の保管および処分状況を都道府県知事に届け出る必要があります。また、新たにPCB廃棄物が見つかった場合や、PCB廃棄物の紛失、漏洩などが発生した場合も届出が必要です。
届出の窓口や方法は自治体によって異なるため、PCB含有廃棄物が見つかった場合は、速やかに自治体の窓口に相談し、届出について相談しましょう。
高濃度PCB・低濃度PCB・微量PCB
PCB含有機器には、高濃度PCBと低濃度PCBの区分があります。
高濃度PCB含有機器 | 低濃度PCB含有機器 | |
PCB濃度 | 5,000mg/kg超 | 0.5超~5,000mg/kg以下 |
処分期限 | 令和5年(2023年)3月末 | 令和9年(2027年)3月末 |
判別方法 | 機器の型式や記号を元にメーカーに照会する | メーカー紹介し、PCB含有が否定できない場合は、油の分析を行う |
処理方法 | PCB特措法に基づき設立された処分施設(JESCO)で処分 | 国や自治体が認定・許可した処分場で処分 |
高濃度PCB含有機器は、1974年にPCBの使用が禁止される以前に、メーカーが意図的にPCBを使用して製造した機器です。それに対し、低濃度PCB含有機器には、メーカーが意図せずPCBが混入したものがあり、1974年以降に製造された機器も多く含まれています。
また、特にPCBが意図せず含まれてしまったものを、微量PCBと呼んで区別する場合がありますが、取り扱いは低濃度PCBに含まれます。
高濃度PCBは、機器の型式や記号を元にメーカーに照会することで判定が可能ですが、低濃度PCBはメーカーも把握できていないため、油を分析する必要があります。
PCB特別措置法では、事業者は保有するPCB含有機器を定められた期限内に処分する義務が定められています。この処理期限は濃度によって異なりますが、高濃度PCB含有機器の処分期限はすでに経過しており、さらに最終的な処理期限も迫っているため、早急な対応が必要です。
キュービクル内のPCB含有機器
キュービクル内には、PCBが含まれる可能性がある様々な機器が使用されています。
12種類の「PCB含有電気工作物」
電気事業法及び関係法令では、12種類の電気工作物を「PCB含有電気工作物」として定義しています。
- 変圧器
- 電力用コンデンサー
- 計器用変成器
- リアクトル
- 放電コイル
- 電圧調整器
- 整流器
- 開閉器
- 遮断器
- 中性点抵抗器
- 避雷器及びOFケーブル
このうち、PCB濃度が5,000mg/kgを超える機器は高濃度PCB含有電気工作物となり、2023年3月末までに電路から撤去し処分する義務がありました。すでに期限が過ぎているため、現在も使用している場合、法令違反として行政指導・処分の対象となる可能性があります。
高濃度PCB含有電気工作物の使用状況調査は、主任技術者の責務とされています。使用状況が不明な場合は、主任技術者に確認をとりましょう。
また、万が一高濃度PCB含有電気工作物が発見された場合は、速やかに自治体に届出を行い、対応を相談することが大切です。
また、12種類のPCB含有電気工作物のうち、PCB濃度が0.5超~5,000mg/kg以下の機器は低濃度PCB含有電気工作物です。低濃度PCB含有電気工作物を使用している場合、経済産業省への届出が必要ですので、確実に実施するようにしましょう。
その他のPCB含有機器
12種類のPCB含有電気工作物以外にもキュービクル内にPCB含有機器が存在する可能性があるため注意が必要です。
例えば、蛍光灯安定器にもPCBが使用されていたケースが確認されています。特に1977年3月以前に製造された業務用・施設用蛍光灯安定器には、高濃度PCBで含まれている可能性があります。蛍光灯はキュービクル内の明かりとして使用されているかもしれません。
また、PCBを直接使用していなくても、製造過程や点検・補充時の交叉汚染により、微量のPCB(0.5mg/kg超〜5,000mg/kg未満)が混入している機器もあります。特に1989年以前に製造された電気機器は、微量PCB汚染の可能性があるため、分析検査が必要です。
キュービクルを管理する主任技術者や専門業者に相談し、漏れのない確認ができるよう注意しましょう。
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PCB含有機器の調査・確認方法
キュービクル内のPCB含有機器を特定するためには、以下の方法があります。
製造年による判別方法
現在ではPCBの使用が禁止されているため、近年製造された機器にはPCB含有機器はありません。そこで、製造年からPCBの含有を判別することが可能です。
コンデンサーなどの絶縁油封じ切り機器は、1991年以降に製造されたものは汚染の可能性がないとされています。
また、油入り変圧器等の絶縁油の交換が可能な機器も1994年以降に製造されたものであれば出荷時に汚染されていた可能性はありません。しかし、絶縁油を交換した際に混入した可能性があるため、絶縁油の交換や継ぎ足しの記録の確認、分析などにより確認が必要です。
ただし、実際にはこれらの年代以降に製造された機器からも微量のPCBが検出されている事例があります。製造年による判別は目安程度とし、確実な判定にはメーカー照会を行いましょう。
メーカーへの照会
機器に取り付けられている銘板には、製造年月、製造番号、型式などの情報が記載されています。この情報を元に、メーカーにPCB使用の有無を照会することが可能です。
主要メーカーではPCB含有機器のリストを公開していることもあります。リストが公開されていない場合は、ホームページなどに掲載された問い合わせ窓口や所定のメールフォームで問い合わせをしましょう。
メーカーに照会すると、PCBが含有・非含有の他、「含有を否定できない」などのグレーな回答が送られてくることもあります。この場合は、油のサンプリング分析を行わなければ正確な判定はできません。
ただし、分析には費用がかかるため、「含有を否定できない」をもって低濃度PCB含有とみなして処分することも可能です。
サンプリング分析の方法
変圧器やコンデンサの絶縁油をサンプリングし、PCB濃度を分析する方法です。メーカー照会で明確な回答を得られなかった場合に行います。
サンプリングは専門の技術者によって行われ、絶縁油の採取方法や容器、採取量などに規定があります。また、PCB分析は、「環境大臣が指定する者」または「計量法に基づく特定計量証明事業者」が実施しなければなりません。
サンプル採取から分析までを一貫して実施できる業者に委託するとよいでしょう。
PCB含有機器の適正な保管方法
PCB含有機器が見つかった場合、処分までの間、適正に保管する必要があります。
保管場所 | 保管場所は、雨水の侵入や地下浸透を防止できる構造である必要があります。また、施錠できる場所や関係者以外立ち入れない場所が望ましいです。 |
表示義務 | PCB廃棄物の保管場所には、「PCB廃棄物の保管場所」であることを示す表示と、保管事業者の名称、連絡先、保管品目、処分予定時期などを記載した掲示板を設置する必要があります。また、PCB含有機器自体にも「PCB」と表示することが望ましいです。 |
漏洩防止対策 | PCB油の漏洩を防止するため、専用の容器に入れます。容器に納まらない場合は、機器の下部に防油堤や油受けを設置し、必要に応じて吸収材(おがくずやウエスなど)により、万一漏洩した場合に備えます。 |
定期点検と記録 | 保管中のPCB含有機器は、定期的に点検し、漏油や破損がないか確認します。点検結果は記録し、保存する必要があります。 |
保管を確実に行うため、特定管理産業廃棄物責任者を選任し、管理させなければなりません。
PCB廃棄物の処分
PCB廃棄物の処分方法は、高濃度PCBと低濃度PCBにより異なります。
高濃度PCB含有廃棄物の処分
高濃度PCB含有廃棄物は、国が出資して設立されたJESCOの全国5カ所の処理施設で処分します。地域ごとに担当する処理施設が決まっており、その施設の処理方式や受入基準に従う必要があります。一般的な流れは以下の通りです。
- JESCOへの登録
初めにJESCOへの登録が必要です。登録後、処理委託契約を締結し、処理の順番を待ちます。 - 収集運搬業者の選定
収集運搬は、都道府県知事または政令市長の許可を受けた収集運搬業者に委託します。許可証の確認や、過去の実績、緊急時の対応体制などを考慮して選定しましょう。 - 契約の締結
産業廃棄物の収集運搬処分は、法令により定められた条件を満たした契約締結が義務付けられています。実際の収集運搬・処分前にJESCO及び収集運搬業者と契約を締結しましょう。
- 高濃度PCB廃棄物の収集運搬・処分
廃棄物を収集運搬業者に引き渡します。その後は、契約に基づき処分が進められます。
- マニフェストの発行と保管
産業廃棄物を処分する場合、委託した業者に対して産業廃棄物管理票(マニフェスト)を発行し、適正に処分が行われたことを確認する必要があります。収集運搬業者に引き渡す際に、発行し、その後、返却された伝票を契約書と一緒に最低5年保管します。
低濃度PCB含有廃棄物の処分
低濃度PCB含有廃棄物は国や自治体に認可・許可された民間の処分場で処分可能です。特定管理産業廃棄物として、厳しい管理が求められますが、一般的な産業廃棄物と同じ流れで処分することができます。
- 収集運搬業者・処分業者の選定
収集運搬及び処分は、都道府県知事または政令市長の許可を受けた業者に委託します。同じ業者で収集運搬から処分まで可能な場合とそれぞれ別の業者で行う場合がありますが、収集運搬業者が窓口となり手続きを行う方法が一般的です。 - 契約の締結
産業廃棄物の収集運搬処分は、法令により定められた条件を満たした契約締結が義務付けられています。収集運搬と処分が別の業者である場合は、それぞれ直接契約が必要なので注意しましょう。
- 低濃度PCB含有廃棄物の収集運搬・処分
廃棄物を収集運搬業者に引き渡します。その後は、契約に基づき処分が進められます。
- マニフェストの発行と保管
高濃度PCB含有廃棄物と同じくマニフェストの発行と保管が必要です。
PCB含有機器の調査・処分にかかる費用
PCB含有機器の調査・処分には、以下のような費用がかかります。
サンプリング分析費用 | 1検体あたり2〜5万円程度です。機器の種類や分析方法によって異なります |
収集運搬費用 | PCB廃棄物の収集運搬費用は、重量や距離、機器の種類によって異なります。変圧器などの大型機器であれば、1台あたり10〜50万円程度必要な可能性もあります。 |
高濃度PCB含有廃棄物の処分費用 | 重量・機器の種別により定められており、1台当たり数十万円〜数百万円(特に大型のものは1千万円以上) |
低濃度PCB含有廃棄物の処分費用 | 民間事業者であるため見積もりが必要 |
このように、PCB含有機器の調査。処分には高額な費用がかかります。また、使用中の機器を取り外して処分する場合、新たに代替する機器を設置しなければなりません。
中小企業によるPCB廃棄物処理を支援するため、独立行政法人環境再生保全機構による「PCB廃棄物処理助成金」制度があります。この制度では、処理費用の70%が助成される場合があります。また、地方自治体によっては独自の補助制度を設けているケースもあります。
PCB含有機器は適切な処分を!
PCB含有機器は、法令により規制されており、PCB含有廃棄物は期限内の処理が義務付けられています。キュービクルをはじめとした自家用電気工作物には、PCB含有機器が多数使用されてきた歴史があり、特に注意が必要です。
処分には高額な費用が必要ですが、コンプライアンス上の重要課題と認識し、適切な処分を進めることが求められます。費用面では補助金・助成金の制度もあるため、うまく活用して処分を進めましょう。
これらの対応には、専門的な知識が必要となりますので、対応が進んでいない場合は、専門業者へ相談することをおすすめします。
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日本高圧電気株式会社 | 日本電力株式会社 |
若菜電設株式会社 | 株式会社アイディーエム |
株式会社鈴木電気商会 | 株式会社D.D.J |
株式会社平沼電設 | 株式会社Center |
株式会社太子電機 | 石切電業株式会社 |
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株式会社ナカケン | 有限会社ヤマウラ電工 |
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