キュービクル設備における変圧器(トランス)の役割と種類

大規模な電力を使用する商業施設、工場、オフィスビルなどでは、電力会社から高圧電力を受電し、建物内で使用可能な低圧電力に変換する必要があります。この変換を担う重要な設備がキュービクル式高圧受電設備(以下、キュービクル)であり、その心臓部とも言えるのが変圧器(トランス)です。

変圧器はキュービクル内部に設置され、高圧電力を低圧に変換することで、一般的な電気機器で使用できるようにします。変圧器の選定や運用方法によって、電力供給の安定性やエネルギー効率が大きく左右されるため、電気設備に関わる技術者にとって変圧器の理解は不可欠です。

本記事では、変圧器の基本原理から、キュービクルにおける変圧器の役割、種類、選定方法を解説します。

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変圧器とは何か?

変圧器(トランス)は、電磁誘導の原理を利用して交流電圧を変換する静止型の電気機器です。最も基本的な役割は、一定の比率で電圧を変換することであり、これにより電力系統の各部分に最適な電圧を供給することが可能になります。

変圧器の基本構造は、鉄心(コア)と、その周りに巻かれた二組の巻線(一次巻線と二次巻線)で構成されています。一次巻線に交流電流が流れると、鉄心内に交流磁束が発生します。この磁束の変化が二次巻線に電圧を誘起する原理で動作します。

変圧器の電圧変換比は、原則として巻線の巻数比に比例します。例えば、一次巻線が6,600回で二次巻線が200回の場合、6,600Vの入力電圧に対し200Vの出力電圧を得ることができます。

これは、あくまで理論上の数値です。実際の変圧器では、損失や漏れ磁束などの影響により、この理想的な関係からは若干のずれが生じることに注意してください。

キュービクルにおける変圧器の役割

変圧器は、電気の安定供給に欠かせない機器です。キュービクルにおいても最も重要な役割を果たします。

電力系統と変圧器

日本の電力系統では、一般的に特別高圧(7,000V超)、高圧(600V超7,000V以下)、低圧(600V以下)という電圧区分が用いられています。発電所で発電された電力は、特別高圧又は高圧の状態で各地に送電され、需要家の近くで低圧に変換されます。

これは、電圧が高いほど少ないロスで遠くまで送電できるためです。変圧器は、このように状況によって電圧を使い分けるために重要な役割を果たしています。

高圧受電とキュービクル・変圧器

電力会社の約款等によって、契約電力が50kW以上の大規模需要家は、電力会社から高圧(6,600V)で受電することが定められています。この高圧電力は、そのままでは一般的な電気機器で使用できないため、変圧器を用いて低圧(100V/200V)に変換することが必要です。

高圧受電には経済性、安定性、大容量受電が可能といったメリットがあります。電力料金が比較的安価になるほか、低圧受電と比較して電圧変動が少なく、安定した電力供給が実現可能です。しかし、高圧受電を行うためには専用の受変電設備が必要となります。

小・中規模の施設では受変電設備としてキュービクルが広く普及しています。キュービクルにおいて、中核を担うのが変圧器です。受電点から引き込んだ高圧電力を変圧器で低圧に変換し、各負荷設備に配電します。

また、変圧器は、電圧の変換だけでなく、高圧系統と低圧系統を電気的に絶縁することで、高圧側の事故が低圧側に波及することを防ぐ安全上の役割も果たしています。

キュービクルに使用される変圧器の種類

変圧器は、目的によって様々な製品が存在します。ここではキュービクルに使用される変圧器の種類について、簡単に紹介します。

電灯・動力用変圧器

キュービクルで使用される変圧器は、用途によって電灯用と動力用に大別されます。これは供給対象となる負荷の特性が応じた電力を供給するためです。

電力の種類主な用途
電灯電力(単相電力)照明、コンセント、家電製品、オフィス機器、電子機器など
動力電力(三相電力)エレベーター、ポンプ、大型空調、工作機械など

電灯用変圧器は、主に照明や一般コンセントなどの電灯負荷に電力を供給するための変圧器です。100V又は200Vの電気で、一般家庭で使用する電気と同じものと考えるとわかりやすいでしょう。

電灯負荷は力率が比較的高く(0.9~1.0程度)、負荷変動も小さいことが特徴です。オフィスの照明設備、一般コンセント、家電製品、電子機器などの電源として使用されます。

一方、動力用変圧器は、モーターなどの動力機器に電力を供給するための変圧器です。三相3線式の二次側配線を持ち、一般的に二次電圧は210V(三相)です。

動力負荷は始動時に大きな突入電流が流れ、負荷の変動が大きいという特性があり、力率も比較的低い(0.7~0.85程度)場合が多いです。エレベーター、ポンプ・ファン、空調機器、工作機械、コンプレッサーなどの電源として使用されます。

電灯・動力はそれぞれ目的が異なるため、多くのキュービクルでは電灯・動力用の変圧器が設置されています。電灯用と動力用の変圧器を設置する場合、それぞれの負荷容量に応じた適切な容量配分を行うことが重要です。

施設の用途や規模、設置する電気設備によって電灯負荷と動力負荷の比率が異なるため、設計段階での慎重な検討が必要です。また、将来の拡張性や負荷構成の変化も考慮に入れる必要があります。

また、この他にも、動力変圧器や三相発電機などから出力される電力を電灯負荷用に変換するスコットトランスといった変圧器も存在します。

変圧器の電気容量

変圧器は、製品ごとに使用できる電気容量が決められています。一般的な変圧器の容量は規格化されており、50kVA、75kVA、100kVA、150kVA、200kVA、300kVA、500kVA、750kVA、1000kVAなどがあります。

キュービクルでは、設置した変圧器の電気容量を超えた電力は使用できません。また、電気容量に対し、使用電力があまりに小さいと効率が落ちて無駄な電力消費が発生してしまいます。そのため、使用電力に応じて適した電気容量を選択することが必要です。

なお、変圧器は、一般的に最大容量の60%程度で稼働させた場合が最も効率が高いと言われています

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変圧器の構造による種類

変圧器は絶縁方式によって油入変圧器とモールド変圧器に大きく分類されます。

油入変圧器は絶縁油を使用して巻線と鉄心を絶縁・冷却する方式で、冷却効果と絶縁性能に優れ、比較的低コストであることが特徴です。ただし、防火対策が必要であり、油漏れのリスクや環境負荷の問題もあります。

油入変圧器は、屋外設置型キュービクルや専用の変電室など、スペースが取りやすい大規模施設などに適しています。

モールド変圧器は巻線をエポキシ樹脂などで固めた乾式変圧器です。難燃性・不燃性で安全性が高く、防塵・防湿性に優れ、環境負荷も少ないという利点があります。また、油入変圧器に比べるとコンパクト・軽量な点も優れています。

一方で、油入変圧器より高コストであり、冷却効率が劣るという課題もあります。また、重量が軽いため、振動による騒音が発生しやすいという問題も見逃せないポイントです。

地下変電室やオフィスビル・商業施設など、防火対策が必要な場所に適しています。

最近では、鉄心にアモルファス金属(非晶質金属)を用いたアモルファス変圧器も登場し、省エネ・環境負荷低減から注目されています。

アモルファス変圧器は無負荷損(鉄損)がほとんど発生せず、発熱が小さい点が大きなメリットです。しかし、モールド変圧器よりさらに高価なため、キュービクル用の変圧器として広く普及しているとはいいがたいでしょう。

変圧器の選定においては、これらの種類の特徴を理解した上で、設置環境や負荷条件に最適なものを選ぶことが重要です。

キュービクルにおける変圧器選定の重要ポイント

ここで、キュービクルの変圧器を選定するポイントを紹介します。

電気容量の算定

変圧器の選定には、容量計算が最も基本的かつ重要です。接続される負荷設備の総合計容量に、力率、効率、需要率(同時使用率)、負荷の成長率(将来の拡張性)などを考慮して適切な容量を決定することが求められます。また、現在の電力使用状況だけでなく、将来の設備増強などを考慮します。

過大な容量を選定すると初期コストが増大し、無負荷損失も増加します。一方、容量不足だと過負荷運転による絶縁劣化や寿命短縮のリスクがあります。さらに、必要な電力が供給できず、設備が使えない可能性も出てきます。

キュービクル容量の決め方とは?調べ方から選定のポイントまで解説

キュービクル・変圧器の設置環境

設置環境も重要なポイントです。周囲温度と換気条件、防火区画の要件、スペース制約、騒音規制、湿度・塵埃・腐食性ガスの有無などを考慮しなければなりません。

例えば、「屋内設置で防火区画の要件が厳しい場合はモールド変圧器」「振動による騒音を考慮して油入変圧器」といったことが考えられます。

実際には、複数の条件が重なるため、優先度を定めてどの変圧器にするか検討しましょう。

経済性・コスト面の評価

コスト面の評価も変圧器選定の重要な視点です。製品価格や設置工事費といった初期導入コストだけでなく、省エネ性能、保守点検コスト、耐用年数といったランニングコストを含めたライフサイクルコストを総合的に評価します。

例えば省エネ性能が高い変圧器は、他の製品よりも高価であっても長期的にはコストメリットがあるでしょう。

環境性能

近年では環境への配慮も重要な選定要素です。省エネルギー変圧器や環境配慮型の変圧器の採用が増えており、環境への悪影響が少ない植物油入変圧器などの新技術も普及しつつあります。これらは初期コストが高いものの、エネルギー効率の向上や環境負荷の低減といった観点で優れた特性を持っています。

変圧器のトップランナー制度とキュービクルの省エネ対応

変圧器はキュービクルの心臓部!

キュービクルにおける変圧器は、高圧電力を低圧に変換するという基本的な役割に加え、電気的絶縁や電力品質の改善など、電力供給システムの安全性と信頼性を確保する上で重要な機能を担っています。

変圧器の種類は様々な観点から分類され、それぞれに特徴や適する条件があります。設備計画においては、負荷特性や設置環境、経済性などを総合的に考慮し、最適な変圧器を選定することが重要です。

総合的に見て、変圧器の選定には技術的要素と経済的要素のバランスが重要です。初期コストだけでなく、長期的な運用コストや信頼性、環境影響なども考慮した総合的な判断が求められます。また、法規制や規格への適合性も確認する必要があります。

キュービクルとその心臓部である変圧器の理解を深めることは、電気設備の計画・設計・運用に携わる方々にとって、安全で効率的な電力システムを実現するための重要な基盤となるでしょう

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