一般的にキュービクルは、電力会社から高圧の電圧の電気を受電し需要場所で使用するために低圧の電圧の電気に変換する高圧受変電設備の一種です。工場やオフィスビル、スーパー、病院など、多くの施設で使用されています。
しかし、すべての施設でキュービクルが設置されているわけではありません。ではどのような場合にキュービクルを設置する必要があるのでしょうか?
この記事では、キュービクルはどのような場合に設置するのか、設置基準や必要性について説明します。
目次
キュービクルの設置が必要な条件
キュービクルの設置が必要な条件について、以下の表にまとめました。この表により、どのような条件下でキュービクルの設置が必要とされるかがわかります。
項目 | 設置が必要な条件 |
---|---|
電力需要 | 高圧受電が必要な場合(通常、50kVA以上の負荷がある場合)。 |
設置場所 | 商業施設、工場、学校、大型ビルなど、一定規模以上の建物。 |
電力供給 | 地域の電力会社が高圧電力供給を要求する場合。 |
安全性の確保 | 電力設備を一箇所にまとめて管理し、感電や火災のリスクを低減する必要がある場合。 |
スペースの効率利用 | 限られたスペースで受電設備を設置する必要がある場合。 |
メンテナンスの容易さ | 定期的な点検やメンテナンスを容易に行う必要がある場合。 |
法規制の遵守 | 電気事業法や電気設備技術基準に基づき高圧受電設備が必要とされる場合。 |
費用効率 | 低コストで高効率の電力管理を行いたい場合。 |
防災・防火対策 | 防火や防災の観点から、電力設備を専用の箱(キュービクル)にまとめる必要がある場合。 |
電力品質の管理 | 電力の品質や安定供給を維持するための専用設備が必要な場合。 |
特殊な環境条件 | 外部環境(温度、湿度、粉塵など)の影響を受けやすい場合。 |
法令遵守 | 建築基準法や消防法など、法令で定められた基準を満たす必要がある場合。 |
ビルディング・マネジメント | ビル全体のエネルギー管理を一元化し、効率的に運用する必要がある場合。 |
この表は、キュービクルの設置が求められる主な条件を示しています。キュービクルは、高圧電力の受電が必要な場合や、安全性・メンテナンスの利便性を確保するために設置されることが一般的です。適切な設置により、電力供給の信頼性や安全性が向上し、法令遵守が確保されます。
キュービクルの設置基準/要件
キュービクルの設置基準について、以下の表にまとめました。これにより、設置に関する主要な基準や要件を理解しやすくなります。
項目 | 設置基準/要件 |
---|---|
設置場所 | 屋内・屋外設置可能。ただし、屋外設置の場合は防水・防塵対策が必要。 |
設置スペース | 十分な作業スペースを確保すること(最低でも前面1.2m以上、背面および側面0.6m以上)。 |
基礎 | コンクリート製の基礎を使用し、キュービクルの重量に耐えられるようにする。振動や地震に対する耐性を持つこと。 |
防火対策 | 防火壁や耐火材で囲むことが推奨される。周囲に可燃物を置かない。 |
通気・換気 | 適切な換気を確保し、内部の熱がこもらないようにする。換気口を設け、自然換気または強制換気を行うこと。 |
防水・防塵 | 屋外設置の場合、IP43以上の防水・防塵性能を持つこと。屋内でも湿気や粉塵が発生する場所では同様の対策が必要。 |
アース(接地) | 接地工事を行い、漏電時の安全を確保する。接地抵抗値は10Ω以下にすることが望ましい。 |
避雷対策 | 避雷器の設置を行い、雷サージから機器を保護すること。特に雷の多い地域では強化された避雷対策が求められる。 |
機器配置 | 高圧受電盤、変圧器、低圧分電盤を効率的に配置し、点検や操作が容易に行えるようにする。 |
安全標識の設置 | 高圧機器に近づく危険性を示す標識を設置すること。感電や火災のリスクを減らすために注意喚起を行う。 |
照明 | メンテナンス時の作業が容易に行えるよう、十分な照明を設けること。 |
騒音対策 | 変圧器や冷却ファンの騒音を抑えるため、防音対策を施すこと。必要に応じて防音壁や防音材を使用する。 |
点検・メンテナンスの容易さ | 定期的な点検が行えるよう、各機器へのアクセスが容易であること。点検用の扉やスペースを設ける。 |
電気設備技術基準 | 電気設備技術基準に従い、安全かつ適切に設置すること。これには、電気事業法や関連する省令の遵守も含まれる。 |
法規制の遵守 | 電気事業法、建築基準法、防火規則、その他関連法規を遵守すること。 |
この表は、キュービクルの設置基準を示し、安全で効果的な運用を確保するための要件を明確にしています。これらの基準を満たすことで、キュービクルの安全性と効率性が向上し、事故やトラブルのリスクを低減することができます。
キュービクルを設置するのはどんな場合?
まずキュービクルはどんな場合に設置するのかを順を追って説明します。
電気を使用するには変圧設備が必要
身の回りの電気機器で使用する電気は、多くの場合100~200V程度の低圧です。しかし、低圧の電気を長距離送電すると大きなロスが発生しとても非効率なため、電力会社は6,600V~50万V(高圧~特別高圧)の高い電圧で電気を送っています。
このため、高い電圧から低圧の電気に変換(変圧)する必要があり、電力会社で変圧する場合と電気を使用する需要家側で変圧する場合があるのです。
電力会社の設備ですぐに使用できる低圧にして需要家に送る方法を低圧受電といい、一般家庭や小規模な店舗・事務所などで使われます。それに対し、需要家が電力会社から高圧のまま受電する方法を高圧受電といい、一定以上の大電力を使用する場合に用いられます。
高圧受電では、電力会社から受け取った電気をそのまま使用することはできません。そのため、受け取った電気を低圧に変圧する高圧受変電設備が必要となります。
圧受電を行う理由は主に以下の2つです。
1.最大使用電力50kW以上の場合
2.高圧受電により電気料金が安くなる場合
そもそも、最大使用電力が50kWを超える需要場では、電気契約上の規定により高圧受電する必要があります。この場合は、なんらかの高圧受変電設備が必要ということです。
また、高圧受電と低圧受電では同じ電力を使用しても電気料金が異なります。このため、大電力を使用する場合には高圧受変電設備のイニシャルコスト・ランニングコストを考えてもコストダウンになるケースがあります。
例えば、マンションでは1戸ずつの電気契約となるため、建物全体での使用電力量が50kWを超えても低圧受電が可能です。しかし、あえてマンション全体で共有する高圧受変電設備を設け、高圧で一括受電することで電気料金が下がるといった事例があります。
キュービクル(閉鎖型)が現在の主流
高圧受変電設備には「開放型」と「閉鎖型(通称:キュービクル)」があり、それぞれ複数の呼び方があります。下にそれぞれの呼び方と構造を簡単にまとめました。
高圧受変電設備の種類 | 構造 |
開放型高圧受変電設備オープン型受変電設備フレーム式受変電設備 | 金属製のパイプや鋼材でフレームを作り、その中に変圧器などの機器を設置します。配線や開閉器、計器などはフレームを利用して設置します。主に屋内に設置するため、電気室など専用の室が必要です。 |
閉鎖型高圧受変電設備キュービクル式受変電設備 | 工場で制作した専用の金属箱内に変圧器など必要な機器をすべて納めた高圧受変電設備です。開放型に比べるとコンパクトで屋内・屋外共に設置できます。 |
以前は開放型高圧受変電設備が主流でしたが、技術の進歩によりキュービクルの普及が進み、現在ではキュービクルが使用できる規模の需要場ではほとんどキュービクルが設置されるまでになっています。
このため、一部の大規模な需要場を除くと「高圧受電≒キュービクル設置」と考えている設計者も多いでしょう。
キュービクル(閉鎖型)が選択される理由
現在キュービクルが主流となっているのは、開放型高圧受変電設備に比べて多くのメリットがあるためです。特に開放型が設置できないような場所や条件でもキュービクルなら設置できるケースも多く、実質キュービクルしか選択肢がない場合もあります。
ここで、キュービクルが選択される代表的な理由を紹介します。
開放型に比べコンパクトで屋外への設置も可能
キュービクルは工場で制作した専用の金属箱にすべての機器を納めるため、開放型受変電設備に比べてコンパクトであり、少ないスペースに設置することができます。
さらに、専用の室が必要となる開放型受変電設備と違い、屋外への設置も可能なため、建物外の敷地や屋上などに設置することもできます。
建物設計では、限られた土地・床面積のなか、いかに効率的にスペースを利用するかが重視されます。そのため、コンパクトで設置場所を選ばないことは大きなメリットです。
事故や故障のリスクが低く安全
高圧の配線や電気機器がむき出しで設置されている開放型受変電設備に比べ、すべての機器が金属箱に納まっているキュービクルは感電などのリスクが少なく安全です。
さらに、周囲の環境による影響も受けづらいため、突発的な故障のリスクも低いと考えられます。
品質が安定し工期も短縮できる
キュービクルは工場で制作されるため、現地で組む開放型高圧受変電設備に比べ品質が安定しています。また、工場で制作したものを現地で設置するだけなので、設置にかかる時間が非常に短いというメリットがあります。
もちろん、工場で制作する期間は必要ですが、制作期間は工事現場での他の工程と影響しません。さらに、使用中の需要場所での設備更新では、工事期間の短縮により建物が使用できない期間、事業を停止する期間などを短縮できます。
開放型受変電設備が選択される場合
キュービクルは開放型高圧受変電設備と比較し様々なメリットがありますが、どのような場合でも使用できるわけではありません。また、状況によっては開放型受変電設備の方が優れているケースもあります。
ここで、開放型受変電設備が選択される例を紹介しましょう。
容量2,000kWを超える場合
「JISC4620:2018 キュービクル式高圧受電設備」の規定ではキュービクルは6,600V以下、最大電気容量4,000kVA以下となっています。そのため、これを超える規模の電力を使用する場合にはキュービクルは使えません。
さらに2,000kW以上では、電力会社の規定により6,600Vの高圧受電ではなく2万Vの特別高圧受電で契約することになります。このため、実際には容量2,000kWを超える場合は、開放型受変電設備の設置が必要です。
電気容量が変更になる場合
キュービクルは金属箱のサイズが決まっているため、最初に電気容量を決定すると容易に増やすことはできません。しかし、開放型受変電設備であれば、変圧器を追加し、それに付随する機器類を設置すれば電気容量を増やすことができます。
工場で製造ラインを増やす場合なども、開放型受変電設備では比較的容易に対応できるということです。このため、将来的な電気容量の変更が予想される場合には開放型受変電設備が選択される場合があります。
高圧受変電設備の最初の選択肢はキュービクル
キュービクルは施工性、安全性、利便性、多くの面でメリットがあり、50kW~2,000kWの中規模の需要用であれば最初の選択肢はキュービクルになるといってよいでしょう。
そのうえで、現場の特性を考え開放型高圧受変電設備と比較し、キュービクルを設置するべきかを検討するようにしましょう。
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