キュービクルの寸法(幅・奥行き・高さ)や重さは、必要な電気容量や付加設備によって変わり、幅・奥行共に2m以下の小型のものから幅10mを超えるものまで存在します。
そのため新規にキュービクルを設置する場合には、必要な要件に合ったキュービクルの寸法を想定し、設置できるスペースがあるか検討が必要です。
この記事では、キュービクルの寸法や重さについて、関係する要因や想定寸法の目安などを解説します。
キュービクルの寸法や重さに影響する要素
まずは、キュービクルの寸法(幅・奥行き・高さ)や重さに影響する要素を紹介します。設置する需要場で必要な電気の要件により、寸法や重さが変わることがわかるでしょう。
使用する電気の種別
一般的の需要家が使用する電気は、主に電灯(単相3線式100/200V)及び動力(三相3線式200V)の2種類です。工場など大型の機器や特殊な電気機器を扱う場合は、さらに別の種類の電気を必要とする場合もあります。
需要場で使用する電気の種類が電灯だけなのか、それとも電灯・動力の両方必要なのかによって、キュービクルの寸法や重さは大きく変わります。
通常、キュービクルはいくつかの盤(箱)で構成されますが、一般的な構成例は以下のようなものです。
- 高圧受電盤:電力会社からの高圧の電気を受電する。
- 低圧電灯盤:高圧電力を低圧電灯(単相3線式100/200V)に変換し需要場に送る。
- 低圧動力盤:高圧電力を低圧動力(三相3線式200V)に変換し需要場に送る。
需要場で必要な電気が電灯だけであれば「高圧受電盤+低圧電灯盤」の2つ、電灯と動力が必要な場合は「高圧受電盤+低圧電灯盤+低圧動力盤」の3つが必要となります。さらに、これ以外の電圧で使用する電気機器がある場合は、盤を追加しなければなりません。
このように使用する電気の種類によってキュービクルの寸法や重さが変わってきます。
最大電気容量
キュービクルの寸法や重さは、最大電気容量が大きくなるごとに大きく重くなっていきます。
キュービクル内で最も大きく重い機器は変圧器です。より大きな電力を変電できる変圧器は、概ね容量に比例して大きく、重くなります。また、一つの変圧器ではなく複数の変圧器を組み合わせて使用することも多く、容量が増えることにより変圧器の台数を増やす場合もあります。
この他、変圧器以外の機器も電気容量が増えるごとに大型化し、必要な数が増えるものです。そのため、キュービクルの盤の数を増やす検討も必要になります。
動力設備の力率を改善するためのコンデンサは、需要場に設置される電気機器に合わせて適した容量を選定することが必要です。大きなコンデンサ容量が必要な場合は、コンデンサの大きさや数もかなりのものとなるため、専用のコンデンサ盤を追加する場合があります。
付加機能や付属機器
キュービクルには遮断機や変圧器の他にも様々な機器が設置されています。
例えば、太陽光発電設備や非常用発電機を設置する場合などは、これらの発電設備と連携するための機器を設置が必要となり、状況に応じて専用の系統連系盤を追加する場合もあります。
このように、キュービクルには受変電以外の機能が付加されることもあり、それらの付加機能や付属する機器によってキュービクルの寸法や重さが変わってきます。
キュービクル本体の構造
キュービクル内の機器だけでなく、キュービクル本体(金属箱)の構造によっても寸法や重さが変わってきます。
キュービクルの前面だけに扉が付いている前面保守形と、前面と後面の両方に扉が付いている前後面保守形では、内部の機器の配置が変わるため、外形寸法にも影響します。また、屋外に設置するキュービクルは、雨天など全天候に対応できる必要があるため、屋内型よりも大型化する傾向があります。
このように、キュービクル本体の構造によっても寸法や重さが変わってくるのです。
一般的なキュービクルの寸法
ここで、一般的なキュービクルの寸法(幅・奥行き・高さ)について紹介します。キュービクルの新規設置を検討する際には想定寸法が必要となるので参考にしてください。
なお、実際の寸法はメーカーによって異なるため、最終的な寸法の確認はメーカーのカタログや仕様書で行いましょう。
JISC4620:2018の外形寸法例
キュービクルの規格を定めているJISC4620:2018「キュービクル式高圧受電設備」には参考資料としてキュービクルの外形寸法例が掲載されています。JISの外形寸法例は前後面保守形と前面保守形に分かれています。ここでは、主に使用される2,000kVAまでのものを紹介します。
前後面保守形の外形寸法例は以下の通りです。
受電設備容量(kVA) | 外形寸法(mm) | 盤構成例 | |||||
W | D | H | 受電盤 | コンデンサ | 動力盤 | 電灯盤 | |
150以下 | 3,400 | 2,000 | 2,800 | 1面 | 1面 | 1面 | 1面 |
150超300以下 | 4,500 | 2,200 | 2,800 | 1面 | 1面 | 2面 | 1面 |
300超500以下 | 6,000 | 2,400 | 2,800 | 1面 | 1面 | 2面 | 2面 |
500超1,000以下 | 8,500 | 2,600 | 2,800 | 1面 | 1面 | 3面 | 3面 |
1,000超1,500以下 | 11,000 | 2,800 | 2,800 | 1面 | 2面 | 4面 | 3面 |
1,500超2,000以下 | 13,000 | 2,800 | 2,800 | 1面 | 2面 | 5面 | 3面 |
前面保守形の外形寸法例は以下の通りです。
受電設備容量(kVA) | 外形寸法(mm) | 盤構成例 | ||||||
W | D | H | 受電盤 | コンデンサ | 動力盤 | 電灯盤 | 低圧盤 | |
150以下 | 6,400 | 1,000 | 2,800 | 2面 | 1面 | 1面 | 1面 | 2面 |
150超300以下 | 8,500 | 1,000 | 2,800 | 2面 | 1面 | 2面 | 1面 | 3面 |
300超500以下 | 11,000 | 1,000 | 2,800 | 2面 | 1面 | 2面 | 2面 | 4面 |
500超1,000以下 | 16,000 | 1,000 | 2,800 | 2面 | 1面 | 3面 | 3面 | 6面 |
1,000超1,500以下 | 18,500 | 1,000 | 2,800 | 2面 | 2面 | 4面 | 3面 | 7面 |
1,500超2,000以下 | 23,000 | 1,000 | 2,800 | 2面 | 2面 | 5面 | 3面 | 8面 |
ただし、各メーカーが実際に製造しているキュービクルは小型化が進んでおり、JISに掲載されているこれらの外形寸法例は、現在流通しているキュービクルに比べるとかなり大きな寸法です。
実際の外形寸法例
JISの外形寸法例はかなり大きめの寸法です。そこで、キュービクルメーカーのデータを元に、実際に流通しているキュービクルの外形寸法を見てみましょう。なお、この数値は公式資料ではありませんので注意してください。
前後面保守形で変圧器の組合せはJISと合わせた外形寸法例が以下の通りです。
受電設備容量(kVA) | 外形寸法(mm) | 盤構成例 | |||||
W | D | H | 受電盤 | コンデンサ | 動力盤 | 電灯盤 | |
150以下 | 1,600 | 1,600 | 2,300 | 1面 | – | 1面 | (共用) |
150超300以下 | 3,200 | 1,600 | 2,300 | 1面 | – | 2面 | 1面 |
300超500以下 | 4,800 | 1,600 | 2,300 | 1面 | 1面 | 2面 | 2面 |
JISの外形寸法例と比べると、全体的に小さいことがわかります。特に小さな容量のもの(150kVA以下など)では、コンパクトタイプの開発が進んでおり、JISの外形寸法例の半分以下の寸法の製品も存在します。
実際のサイズはメーカーによって異なるので、メーカーのカタログや仕様書を元に選定をしてください。
キュービクルの重さ
キュービクルの概算重量は以下の式で求めることができます。
概算総重量(kg)= ボックス重量(kg) + 主遮断装置重量(kg) + 機器重量(kg)
しかし、キュービクルの重さを決める、ボックス重量や機器重量は、本体(金属箱)の大きさや構造、選定する機器の仕様によって大きく異なるものです。
本体の構造は屋外型か屋内型か、消防認定品かなどにより大きく異なるため、重量にも大きくかかわります。また、キュービクルで最も大きな機器である変圧器は、油入変圧器かモールド変圧器かによる重量の差が大きく、容量に比例するように重くなります。
このように、キュービクルの重さは一概に「〇〇kWのキュービクルだからだいたい○○kgくらい」という計算はできません。しかし、実際に設置する際には、建物への荷重計算や設置作業の計画策定などに重量は大きなポイントです。
そこで、施工計画などを作成する際にはメーカーには外形寸法とともに重さを確認しておきましょう。
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