キュービクルは大型の電気設備であり、適切な設置手順で設置工事を行う必要があります。無計画に設置を進めても、問題なく設置工事が完了する可能性はまずありません。
この記事では、キュービクルの設置手順と注意すべきポイントについて説明します。
キュービクルの設置手順についての一般的な流れ
キュービクルの設置は、高圧受電設備を安全かつ効率的に運用するために必要なプロセスです。以下に、キュービクルの設置手順についての一般的な流れをまとめた表を作成しました。この表は、キュービクル設置の計画から完了までの主要なステップを示しています。
手順 | 内容 | 詳細・備考 |
---|---|---|
1. 初期計画と設計 | 電力需要の評価、設置場所の選定、基本設計の策定 | 建物の電力使用量を見積もり、適切なキュービクルの容量を決定 |
2. 設置場所の確認 | 建物内外の設置スペースの確認、地盤の状態や周辺環境の調査 | 屋内設置か屋外設置かを決定し、設置場所の寸法を確認 |
3. 許可・届け出 | 電力会社への高圧受電設備設置届出、建築確認申請、消防署への届け出 | 地域ごとの規制に基づく必要な許可や届け出を行う |
4. 詳細設計と調達 | キュービクルの詳細設計図の作成、必要な機器・材料の調達 | 変圧器、開閉器、保護装置などの選定と調達 |
5. 基礎工事 | キュービクルを設置するための基礎工事(コンクリート基礎など) | 屋外設置の場合は特に基礎の強度と耐久性に注意 |
6. 設置工事 | キュービクル本体の設置、機器の配置、配線工事の実施 | 電気工事士による安全な施工が求められる |
7. 結線作業 | 高圧受電ケーブルの結線、低圧配電盤への接続 | 結線作業は慎重に行い、接続不良がないように確認 |
8. 試運転と調整 | 試運転を行い、電圧・電流の確認、保護装置の動作テスト | 正常な動作を確認し、異常があれば調整・修正 |
9. 完了検査 | 電力会社、建築確認機関、消防署などによる完了検査の実施 | すべての検査に合格した後、正式に使用開始 |
10. 引き渡し | 施設管理者への引き渡し、使用説明、保守点検計画の説明 | キュービクルの取り扱い説明と、緊急時の対応手順の確認 |
11. 定期点検 | 定期的な保守点検の実施、異常の有無を確認し、必要に応じた修理や調整 | 定期点検は法令で義務付けられている場合があり、安全な運用を確保するため重要 |
重要なポイント:
- 初期計画と設計: キュービクルの設置を計画する際、建物の電力需要を正確に見積もり、将来的な拡張も考慮した設計を行うことが重要です。
- 許可・届け出: 電力会社や地方自治体への必要な届け出や許可申請を怠ると、設置の遅延や法的な問題が発生する可能性があります。事前に必要な書類や手続きを確認し、スムーズに進行できるよう準備することが求められます。
- 安全管理: 設置工事中は、作業員の安全を確保し、事故防止のための対策を徹底する必要があります。また、試運転や調整の際も、専門的な知識と経験を持つ技術者による厳密な確認が重要です。
- 保守点検: 設置完了後も、定期的な保守点検を実施し、設備の正常な運用を維持することが求められます。特に、高圧受電設備は異常が発生した場合に重大なリスクを伴うため、予防的な点検とメンテナンスが不可欠です。
これらの手順に従って、キュービクルの設置を進めることで、電力供給の安定性と安全性を確保することができます。
キュービクルを設置する事前準備
キュービクルを設置するには、事前の準備が重要です。無計画にキュービクルの設置を進めると、搬入経路が確保できず設置位置までキュービクルを運べない、現地で組み立てに必要なスペースが確保できないといったトラブルにつながります。
設置場所の確保と基礎工事
キュービクルの設置場所は、キュービクル本体のサイズに加え、周囲のメンテナンススペースや法令で定められた離隔距離が確保できるだけの設置スペースが必要となります。さらに、キュービクルを設置するための基礎も必要です。
新築工事であれば、事前に設置場所を計画し、建築工事の中でキュービクルの基礎も用意することが一般的です。改修工事でキュービクルを新設する場合は、設置場所を選定するとともに、後付け基礎を設置します。
既存のキュービクルを更新する場合は、設置スペースや基礎はすでにあるはずですが、そのまま使用できるとは限りません。基礎や周囲の設備が劣化していないか確認し、必要に応じて補修を行います。また、キュービクルの形状やサイズが既存のキュービクルから変更になる場合は、新しいキュービクルに合わせて基礎やアンカーボルトの見直しも必要です。
搬入経路の確認と搬入方法の検討
キュービクルは大型の電気設備で重量もあるため、設置位置までどのように搬入するかが重要なポイントです。搬入経路がないため設置位置まで運搬できない、階段を降ろさなければならないが人力だけでは持てないなど、様々な障害が考えられます。
そのため、事前の搬入経路と搬入方法の確認が必要です。
キュービクルは、一般に受電盤や電灯盤などいくつかの盤に分割して搬入されますが、それでも一定のサイズがあり、搬入経路が狭いとキュービクルが通らない可能性があります。また、重量のあるキュービクルを運ぶため、クレーンやリフトなど必要な機器を用意しなければなりません。
事前にしっかりとした確認と検討を行い、搬入当日に確実にキュービクルを設置位置まで運搬できる搬入経路と搬入方法を決めましょう。
キュービクルの設置手順
工場で作成したキュービクルを現地に設置する工程は主に以下のとおりです。
- キュービクルの搬入
- キュービクルの据え付け
- 現地組み込みする内部機器の設置
- ケーブル・電線類の接続
- キュービクルの試験調整
それでは、各工程に分けて簡単な内容と注意すべきポイントを見ていきましょう。
キュービクルの搬入
キュービクルを、事前に計画した方法で設置場所まで搬入します。搬入経路や搬入方法は、現場の状況により様々です。
屋外に設置する場合で、設置場所に車両が横付けできるのであれば、ユニック車で現地に持ち込み、そのまま車両のクレーンで基礎の上に降ろせる場合もあります。また、屋上に設置する場合には、ラフタークレーンなどの大型のクレーンを用意すれば、屋上の設置場所まで運べる可能性が高いです。仮に直接基礎の上に置けなくても、平地を移動するだけであれば電動リフトやローラーを使用すれば比較的簡単に基礎の近くまで運搬できます。
一方で屋内に設置する場合は、クレーンで直接設置位置に降ろすようなことはできません。そのため、電動リフトやローラーを使用し、状況によっては人力で直接キュービクルを押したり持ち上げたりして運搬する必要があります。
特に、地階に設置するなど階をまたいで運搬する必要がある場合は、階段を上げ下げするのは大変困難です。天井にフックを設けて電動ウインチを使用して持ち上げるなどの工夫が必要でしょう。
搬入経路が狭くキュービクルが通らないなど、設置位置までの運搬が困難な場合は、キュービクルを細かいパーツに分けて搬入し、現地で組み立てを行う方法もあります。ただし、現地組立は特殊な方法のため、メーカーの技術者を派遣してもらう必要がある場合もあります。
また、屋内を運搬する場合は、床や壁を傷つけないように、養生を行うことも重要です。重量のあるキュービクルをぶつけた場合、しっかりしていても破損してしまう場合もあるので慎重な作業が必要です。
キュービクルの据え付け
設置場所に搬入したキュービクルを基礎の上に据え付けます。
まず、基礎の上に、アンカーボルトを用いてチャンネルベースを設置します。アンカーボルトは、基礎を作る際にあらかじめ埋め込んでおく方法とあと施工アンカーを使用する方法があります。あと施工アンカーを使用する場合は、ここでチャンネルベースに合わせてアンカーを打設します。
チャンネルベースにキュービクルを乗せ、ボルト・ナットでしっかりと結合します。また、受電盤や電灯盤など複数の盤に分かれている場合は、それぞれの盤の間もボルト・ナットで結合していきます。この際、各部位にズレが生じないように注意し、ボルト・ナットは1箇所ずつ一気に締め上げずに徐々に締めていくようにしましょう。
屋外用キュービクルの場合は、接合部にパッキンなどの防水加工がされています。接合部がズレたり、パッキンがゆがんだりすると、雨水が入り込み重大事故につながる危険があるため特に注意しましょう。
現地組み込みする内部機器の設置
キュービクルは、工場で作成した段階で、金属箱内に各機器が取り付けられています。しかし、変圧器など特に重量のある機器は、運搬を簡単にする目的で別途搬入して現地組み込みする場合があるのです。
現地組み込みする機器がある場合は、この段階でキュービクル内部に設置します。設置場所にはアングルや架台が設けられているはずですので、しっかりと固定しましょう。
ケーブル・電線類の接続
キュービクルの据え付けが完了したら、キュービクルの各盤間や現地で組み込んだ機器を付属の電線で接続します。また、電力会社からの電力を受けるための高圧ケーブルや、需要場に電気を送るための低圧側のケーブルもキュービクルに接続していきます。
ここで、接続する場所を間違えると、電源投入時に重大事故となる可能性もあるため、回路図をよく確認し、間違いがないように注意しましょう。電線類の接続は、主に端子を用いて行います。また、高圧ケーブルは専用の端末処理も必要です。
キュービクルの試験・調整
キュービクルの設置後は、問題なく正しく設置ができているか試験を行い、問題があれば修正を行います。キュービクルの固定は適切か、ズレはないか、ケーブル・電線類の接続先は間違えていないかなど、ここまでの各工程の作業を再度確認します。
その後、電気主任技術者により、絶縁抵抗測定・接地抵抗測定・絶縁耐力試験・各種の継電器の特性試験といった各種試験や検査を受け、問題なければ設置工事は無事完了です。
キュービクルの設置における注意点
キュービクルの設置には、安全性や運用効率の確保のため、さまざまな注意点があります。以下に、キュービクルの設置における主な注意点を表にまとめました。この表は、設置計画から運用開始後までの全ての段階で考慮すべきポイントを網羅しています。
注意点 | 内容 | 詳細・備考 |
---|---|---|
設置場所の選定 | 設置場所のスペース確保と環境条件の確認 | 防水・防塵対策が必要な場合、屋内設置または防水型キュービクルの選定が求められる |
法令・規制の遵守 | 電力会社や自治体の規制、建築基準法、電気事業法などの確認 | 設置に必要な許可・届出を漏れなく行い、法的トラブルを避ける |
基礎工事の品質確保 | 基礎の強度と耐久性を確保し、設置の安定性を担保する | 地震対策としてアンカー固定や耐震設計を考慮する |
絶縁距離の確保 | 高圧設備周辺の絶縁距離を確保し、感電リスクを防ぐ | 日本電気技術規格委員会(JEM)の基準に従い、適切な絶縁距離を設ける |
冷却と通気の管理 | 設備の熱対策を行い、適切な通気スペースを確保する | 通風口の設置や冷却ファンの設置を検討する |
防火対策 | 火災対策として防火材料の使用と消火設備の設置 | 消防法に基づき、適切な消火設備(消火器、スプリンクラーなど)を設置 |
メンテナンスのしやすさ | 定期点検や緊急時の対応がしやすいように配置・設計する | 出入口の大きさ、点検スペースの確保、照明設備の設置 |
ノイズ対策 | 高圧機器から発生する電磁ノイズの対策を行う | 電磁シールドやノイズフィルターを使用し、周囲の機器に悪影響を及ぼさないようにする |
保護装置の設定 | 過電流、短絡、地絡などの異常時に迅速に回路を遮断する保護装置の設定 | 漏電ブレーカー、過電流保護装置(OCS)の適切な選定と設定 |
安全標識の設置 | 感電や火災のリスクを減少させるために、適切な標識を設置する | 高圧注意、感電注意、火気厳禁などの標識を分かりやすく設置 |
施工後の試験・調整 | 設置後に試運転を行い、全ての機器が正常に動作するか確認する | 電圧、電流、接地抵抗の測定および保護装置の動作確認 |
緊急時対応計画 | 異常事態発生時の迅速な対応手順を作成し、関係者に周知する | 非常時の連絡先、設備停止手順、避難経路などを明確化する |
重要なポイント:
- 法令遵守と届け出: 電気設備の設置に際しては、法律や規制を遵守し、必要な届け出を行うことが重要です。これにより、法的トラブルを防ぎ、設置後の運用もスムーズに進めることができます。
- 安全対策: 感電や火災のリスクを低減するため、絶縁距離の確保、防火対策、適切な保護装置の選定と設定が必要です。緊急時に備えて、安全標識の設置と対応手順の周知も不可欠です。
- 環境対策: 設置場所の環境条件に応じて、防水・防塵対策や冷却対策を講じることで、キュービクルの長期的な安全運用を確保します。
- メンテナンス性の確保: 設置後の点検や保守がしやすいように、アクセスしやすい配置や十分なスペースの確保、照明設備の設置が求められます。
これらの注意点を考慮することで、キュービクルの設置がより安全かつ効率的に行えるようになります。また、専門の電気技術者や工事業者と連携し、適切な設置と運用を行うことが推奨されます。
キュービクルの設置には計画が重要!
キュービクルの設置をトラブルなく行うには、事前の調査としっかりした計画が必要不可欠です。設置スペースは問題ないか、搬入経路は確保できるかなど、現場の状況を把握し、確実な計画を立てるように心がけましょう。
なお、この記事では、主にキュービクルの設置のみを扱いましたが、更新の場合は既設キュービクルの撤去も必要となります。また、使用中の建物でキュービクルを交換する場合は、停電作業の計画や、工事中の電源を確保する仮設キュービクルなどの計画も必要です。
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