キュービクルのトランス交換にはいくらかかる?価格・費用の内訳を解説

キュービクルは、事業所や施設の電力供給を担う重要な電気設備です。キュービクルの故障や不具合は建物全体の停電だけでなく、重大な事故につながる可能性があり、事業活動に重大な影響を及ぼすリスクがあります。そのため、定期的に点検を実施し、劣化した機器や部品を取り替え、設備を適正に保つことが重要です。

なかでもトランス(変圧器)は高圧の電力を施設内で使用可能な電力に変換する役割を持つ、キュービクルにおける主要な機器のひとつです。しかし、多くの事業者にとって、トランスの交換は頻繁に行うものではないため、必要な費用がわからないというケースも多いでしょう。

この記事では、キュービクルのトランス交換の価格について、必要な工事内容や費用の内訳、コスト削減のポイントまで、実務に即した情報を提供します。

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キュービクルのトランス交換はどんな時に必要?

キュービクルにおけるトランスの基本的な役割は、6600Vなどの高圧電力を100V/200Vの低圧電力に変換することです。この重要な機能を安定して維持するために、定期的な点検と適切なタイミングでの更新が必要となります。

一般的なトランスの耐用年数は15年~20年と長いものの、実際の劣化状況は使用環境や負荷状況によって変動します。例えば、空調設備など負荷変動の大きい設備での使用や、埃や湿気の多い環境での使用は、劣化を加速させる要因となります。

このため、定期点検の結果などを元に劣化状況を確認することが必要です。定期点検において、以下のような状態が確認された場合は、交換を検討した方がよいでしょう。

  • 目視点検により、破損やさびなどの劣化が確認された場合
  • 絶縁油の漏洩が発生している場合
  • 異常な温度上昇や振動、異音が発生している場合
  • 絶縁油の劣化や絶縁抵抗値の低下が確認された場合

キュービクル本体の耐用年数は15年から20年程度とされていますが、内部の機器を更新することでより長期的に使用されるケースもあります。この場合、トランスも他の機器と併せて交換することになるでしょう。

また、法規制に対応するため交換が必要なケースもあります。例えば有害物質であるPCBを使用したトランスは、使用が禁止されているため交換が必要です。

トランス交換の費用内訳

キュービクルのトランス交換にかかる費用は、大きく分けて機器本体の費用と工事費に分類されます

機器本体の価格は、容量やタイプによって大きく異なります。一般的な油入式トランスの場合、20kVA程度の小容量機器で30~40万円、500kVA級になると200~250万円ほどします。

また、モールドトランスは、油入トランスと比較して2~3倍ほど価格が高くなりますが、メンテナンス性や安全性に優れるという特徴があります。

日本では、東日本は50Hz、西日本は60Hzと、電気の周波数が異なります。トランスは周波数によっても異なり、西日本で使用される60Hzの方が安価な傾向があるようです。

トランスの価格はメーカーによっても異なるため一概に言えませんが、一般的な相場は以下の通りです。

容量油入トランスの価格相場モールドトランスの価格相場
単相210/105V(電灯)三相210V(動力)単相210/105V(電灯)三相210V(動力)
50kVA40~50万円45~55万円120~130万円150~160万円
100kVA60~70万円65~75万円160~170万円190~200万円
300kVA140~150万円150~160万円340~360万円360~390万円
500kVA220~230万円230~240万円520~540万円540~570万円

上記価格は、2025年1月時点の市場価格を調査した刊行物等を参考にしています。近年は様々な要因による物価高騰など価格変動が大きいため注意してください。

工事にかかる費用は、概ね以下の内容で構成されます。

  • 既存トランスの撤去費用
  • 新規トランスの搬入・設置費用
  • 産業廃棄物の処理費用

これらの合計は、機器本体価格の50〜100%程度になることが一般的です。しかし、実際の工事費用は、現場の状況によって大きく変動します。

撤去工事では、既存トランスの取り外しだけでなく、関連する配線や付帯設備の撤去も必要となります。特に油入式トランスの場合は、絶縁油の抜き取りと適切な処理が必要となり、この作業にも相応の費用が発生します。

設置工事では、新しいトランスの搬入から据付、配線接続、試運転調整までの一連の作業が含まれます。建物の構造上、クレーンが必要となったり、一時的な壁の解体が必要になったりする場合は、追加の費用が発生します。

産業廃棄物の処理費用も無視できません。特にPCBなどの有害物質が含まれる場合は、法的な手続きが必要となり、処理自体にかかる費用も高額になります。

さらに、工事に関連して以下のような追加費用が発生する可能性があります

  • 設計費:トランス交換に伴い電気設備の変更が必要な場合
  • 申請費用:電力会社や諸官庁への申請が必要な場合
  • 仮設費:工事期間中の仮設電源が必要な場合
  • 付帯工事費:基礎の補強などが発生した場合

工事価格は、案件の規模や現場の状況によって大きく変動するため、事前の詳細な現地調査と綿密な打ち合わせが重要となります。

トランス交換の価格に影響する要因

キュービクルのトランス交換の価格は、様々な要因によって変動します。主な影響要因について詳しくみていきましょう。

トランスの容量・仕様

トランスの容量は、費用を決定する最も基本的な要因です。容量が大きくなるほど、機器本体の価格だけでなく、搬入や設置に必要な機材も大型化し、工事費用も増加する傾向があります。

また、油入トランスとモールドトランスの違いもあります。モールドトランスは、本体価格では油入トランスより高額ですが、サイズが小さく重量も軽いため、施工性の面で有利です。特に搬入が困難な場所に設置する場合や、重機が使用できないため人力で設置する場合にはモールドトランスの採用が効果的でしょう。

キュービクルの設置環境

キュービクルの設置環境によって、トランス交換の工事にかかる費用は大きく変動します

キュービクルが屋外にあり、車両を横付けできる環境であれば、重量のある油入トランスでも比較的簡単に搬入・設置が可能でしょう。しかし、屋上に設置されている場合は大型のクレーンにより搬入する必要があります。さらに地下室などに設置されていて人力で搬入しなければならない場合や、搬入経路がなく一時的に壁や床を壊して復旧するケースもあります。

また、工事の難易度は、作業時間や必要な人員数に直接影響します。例えば、高所作業や狭隘部での作業が必要な場合、安全確保のための追加の措置が必要となり、費用増加する要因となるでしょう。

仮設電源の必要性

キュービクルのトランス交換を行うには、キュービクルを停止させ施設全体を停電する必要があります。しかし、24時間体制の医療機関やデータセンターなど施設によっては停電ができない場合もあるでしょう。

停電ができない場合は、仮設のキュービクルや発電機などを設置し、工事中の電源を確保することになります。仮設電源を設置するには、機器の使用料の他、設置スペースの確保や仮設ケーブルの設置も必要です。

仮設電源の設置は、状況によってはトランス交換以上に高額な費用が必要となるケースもあります

コスト削減のポイント

キュービクルのトランス交換を行う場合、なるべく価格を抑えコスト削減したいと考えるのが一般的でしょう。しかし、無理なコスト削減により、工事の品質が落ちては元も子もありません。

ここで、コスト削減を図るためのポイントを紹介します。

複数見積もりの取得と比較検討

キュービクルのトランス交換に必要な価格を抑える最大のポイントは、複数見積もりの取得と比較検討の実施でしょう。

見積もりを比較する場合は、単純な価格比較だけでなく、提案内容や施工実績、アフターサービスなども含めた総合的な評価が重要です。そのため、以下の点に注意するとよいでしょう。

  • 丁寧な事前調査を実施して見積もりを作成している
  • 見積書の内容が項目別に細かく分かれている
  • 不明点・確認に対する説明が丁寧でわかりやすい
  • 工事の保証内容や保証期間が明記されている
  • 追加費用が発生する可能性やリスクに関する説明がある

最低でも3社以上の業者に見積もりを取り、比較検討することで、一般的な相場や工事内容を知ることができ、適切な価格での工事が可能となります。

キュービクルの代表的な大手メーカー21社の一覧

余裕をもった交換の実施

緊急での交換が必要となった場合、割高な費用設定となる可能性が高くなります。計画的な更新を行うことで、より有利な条件での発注が可能となります。また、他の電気設備の更新と同時に実施することで、工事費用の効率化を図ることも可能です。

そのために、定期点検の結果などのデータを参考に余裕をもったトランス交換の計画を立てるようにしましょう。

キュービクルのトランス交換は計画的に!

キュービクルのトランス交換は、事業所の電力供給に関わる重要な工事です。交換にかかる費用は安くありませんが、事業を継続していくうえで必要なコストと考え、適切に実施していくようにしましょう。

しかし、キュービクルのトランス交換は、専門的な知識と経験が必要な工事です。適切な業者選定と綿密な計画立案を行い、安全かつ確実な工事の実施を心がけましょう。

適切な価格でキュービクルのトランス交換を実施するためには、複数の業者に見積もりを依頼し比較検討することが重要です。特定の業者が決まっていない場合は、見積もり比較サービスの利用も効果的です。

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