キュービクルは、高圧または特別高圧の電気を受電し、低圧に変換して建物や施設に配電する重要な設備です。故障や不具合が発生すると停電により事業活動に支障が出るだけでなく、周辺の建物や電気設備に被害を与える波及事故の危険もあります。
そのため、安全で効率的な電力供給を維持するためには、適切なタイミングでのキュービクルの更新や改修が不可欠です。この記事では、キュービクルの更新、交換、入れ替え、改修について説明します。
キュービクルの更新・交換・入れ替え・改修はなぜ行う?
まずは、キュービクルの更新・交換・入れ替え・改修といった工事を行う理由を説明します。
キュービクルの更新・改修が必要な状況
キュービクルは経年により劣化するため、定期的に点検を行い不具合のある部品や劣化した機器を交換しなければなりません。また、長期的にはキュービクル全体の更新も必要です。
その他にも、電力需要の変化や法改正に対応するため、キュービクルの更新や改修を検討する場合もあります。
キュービクルの更新・改修が必要となる状況は主に以下の通りです。
- 老朽化による劣化
- 電力需要の変化
・設備の増設による容量不足
・建物の用途変更に伴う電力需要の増加 - 法規制の変更
・新しい安全基準への適合
・PCB特措法など環境規制への対応 - エネルギー効率の改善
・高効率機器の導入による省エネ
・デマンドコントロールや太陽光発電設備などの導入に伴う機能追加
これらの状況を適切に判断し、必要に応じてキュービクルの更新を行うことで、安全性の確保、電力供給の安定化、コスト削減、環境負荷の低減など、多くのメリットを得ることができます。
キュービクル更新のメリット
キュービクルの更新には、多くのメリットがあります。これらのメリットを理解することで、更新の必要性や投資効果をより明確に認識することができます。
最も重要なメリットは、安全性の向上です。老朽化したキュービクルは、絶縁性能の低下や機器の誤動作などのリスクが高まります。これは、感電や火災などの重大な事故につながる可能性があります。
最新の機器は、より高度な安全機能を備えている場合もあります。また、遠隔監視システムなどの安全機能を導入すれば、異常の早期発見と迅速な対応が可能です。これらの機能により、作業者の安全確保だけでなく、施設全体の安全性も大幅に向上します。
次に挙げられるメリットは、エネルギー効率の改善です。古いキュービクルは、変圧や配電の過程で多くの電力を損失しています。これに対し、最新の高効率変圧器などの省エネ機器を採用することで、電力損失を大幅に低減することができます。
デマンド制御などの省エネ機能を追加し、最大使用電力を抑制するなど、さらに省エネを図ることも可能です。
電力効率の改善は、電力コストの削減につながるだけでなく、CO2排出量の削減にも貢献し、環境負荷の低減にも寄与します。
これらのメリットは、単に設備の更新というだけでなく、施設全体の安全性、効率性、信頼性を向上させ、長期的な運用コストの削減にも貢献します。したがって、キュービクルの更新は、単なる費用ではなく、将来を見据えた重要な投資として捉えることが重要です。
キュービクル更新・改修の種類
キュービクルの更新には、大きく分けて以下の3パターンがあります:
既存キュービクルの部分的な更新
キュービクルなで劣化した特定の部品や機器のみを交換する方法です。
通常、キュービクル内に設置されている機器はそれぞれ耐用年数があり、劣化の速度も異なります。また、キュービクルが故障した場合も、すべての機器が同時に故障することはまずありません。
キュービクル全体の状態が良好で、一部の機器のみに問題がある場合は、対象の機器のみを交換することでコストを抑えつつ、必要最小限の更新ができます。
故障が発生した場合や、定期点検時に不具合や劣化が確認された場合に取替を行うだけでなく、機器ごとに交換周期を決めておくなど、より計画的な更新を行うことでキュービクル全体の長寿命化を図ることが可能です。
既存キュービクルの改修による機能追加・増設
電気容量が足りない場合や、デマンド制御などの新しい付加機能を追加したい場合に、既存キュービクル内の機器を取り替えたり、追加の機器を増設したりすることで、キュービクル全体を交換しなくても対応できる場合があります。
容量の増設などで、キュービクルの箱内に機器が納まらない場合には、既存キュービクルを活用しながら、増設用のキュービクル(金属箱)を設置することも可能です。
既存キュービクルを有効に活用することで、キュービクル全体を取り替える場合に比べ、大幅にコストを抑えながら現状への対応や高機能化することができます。
新しいキュービクルへの完全な交換・入れ替え
既存のキュービクル全体を撤去し、新しいキュービクルを設置します。設備全体の老朽化が進んでいる場合には、一部の機器の取替だけでは対応できないため、全体の交換が必要です。
また、電力需要の大幅な増加に対応する必要がある場合など、既存のキュービクルの改修では機能を満たさない場合も、キュービクル全体の取替を検討することになります。キュービクル全体を交換すれば、最新の技術や機能を全面的に導入することができ、長期的な保守性が向上するなどのメリットもあります。
部分的な更新や改修によって、とりあえず使用できる状況でも、キュービクル全体の交換をした方が総合的にコスト削減となることもあるため、コストとメリットを洗い出し、どの方法が良いか慎重に検討を行いましょう。
更新・改修のプロセス
キュービクルの更新・改修は、複雑で専門的な知識を要する作業です。そのため、実施に当たっては、専門家の協力のもと綿密な計画を作成し進める必要があります。
キュービクルの更新・改修プロセスは、以下の主要な段階で構成されます。
- 現状診断と評価
・劣化度や問題点の明確化
・必要な機能の確認
・更新の必要性と緊急性の判断 - 計画立案
・更新範囲の決定
・導入機器の選定
・工事方法と手順の策定
・コストと工期の見積もり - 工事の実施
・必要に応じて既存設備の撤去
・新規設備・機器の設置
・配線工事 - 検査と試運転
・絶縁抵抗測定、耐電圧試験などの電気試験
・保護継電器試験
・実負荷での運転試験
各段階で専門的な知識と経験が要求されるため、信頼できる業者に依頼することが不可欠です。
更新・改修時の注意点
キュービクルの更新・改修を行う時に、注意が必要なポイントを紹介します。専門業者が提案してきた計画を確認する際にもチェックした方が良いポイントので参考にしてください。
適切な容量設計
最も重要なのは、適切な電気容量設計です。
キュービクルの容量は、現在の電力需要だけでなく、将来的な需要の増加も考慮して決定する必要があります。過小な容量設計では、近い将来に再度更新が必要になる可能性があり、結果的にコストの無駄になります。一方で、過大な容量設計は初期投資が膨らむだけでなく、運用効率の低下にもつながります。
そのため、電力使用状況の詳細な分析と将来予測に基づいて、最適な容量を決定することが重要です。この際、季節変動や時間帯による需要の変化、将来の設備増設計画なども考慮に入れる必要があります。
付加機能の追加や最新技術の導入検討
キュービクル更新の目的には、劣化したキュービクル本体や機器の交換だけでなく、新たに必要となった機能の追加もあります。
また、キュービルの更新は、最新の技術や機能を導入する絶好の機会です。例えば、IoT技術を活用した遠隔監視システムや、高効率な変圧器、高度な保護機能を持つ遮断器などが挙げられます。
これらの新技術は、安全性の向上やエネルギー効率の改善、運用管理の効率化などに大きく寄与します。ただし、新技術の導入に当たっては、その効果と導入コスト、運用・保守の容易さなどを総合的に評価する必要があります。また、導入後の運用管理体制の整備なども考慮しなければなりません。
停電対策
キュービルの更新工事中は、一時的に電力供給を停止する必要があります。
停電が建事業活動や生活に与える影響を最小限に抑えるための綿密な計画が必要です。可能な限り短時間で作業を完了させるための工程管理や、重要な設備への仮設電源の確保、非常用発電機の準備などが求められます。
特に、医療施設や生産工場など、停電の影響が大きい施設では、細心の注意を払う必要があります。また、テナントビルなどでは、各テナントとの綿密な調整も不可欠です。
長期間の停電ができない建物では、仮設キュービクルの設置も検討しましょう。
更新後の運用・管理体制整備
更新後の運用・管理体制の整備も忘れてはなりません。
キュービクルの更新により、従来のものとは異なる特性や機能を付加する場合には、それらを十分に活用するため運用ルールや担当者に対する十分な教育・訓練が必要です。
例えば、異常時に警報が出るシステムを入れても、担当者が把握していなければ緊急の対応が遅れることになります。デマンド制御により一部の電気設備への電力供給が抑制された場合に、機能を知らなければ故障と勘違いするかもしれません。
このように、せっかく付加した機能が無駄にならないように、事前に運用方法を検討しておきましょう。
まとめ
キュービクルの更新、交換、入れ替え、改修は、電気設備の安全性と効率性を維持・向上させるための重要な取り組みです。
キュービクルは大型で高額な電気設備であるため、工事には大きなコストがかかります。しかし、適切なタイミングで実施することで、多くのメリットを享受できます。そのため、コストとメリットを適切に検討し、計画的に実施することが必要です。
更新・改修を成功させるためには、現状の正確な把握、将来のニーズの予測、最新技術の理解、法規制への適合など、多面的な検討が求められます。そのため、トラブルが発生してからではなく、なるべく早い段階から専門業者に相談しておくとよいでしょう。
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