キュービクルには基礎が必要です。キュービクルを設置する場合、床や地面に直接置くことはありません。必ず基礎を設けてその上にキュービクルを設置します。
しかし、直接床に設置しても高圧受変電設備としての機能には直接関係ないため、基礎の必要性が感じられない方もいるでしょう。なぜキュービクルを設置するのに基礎が必要なのでしょうか?
この記事では、キュービクルにおける基礎の役割や構造など「基礎の基礎」を説明します。
キュービクルにおける基礎(架台)の役割
キュービクルにおける基礎にはさまざまな役割があります。まずはどのような役割があるかを知って、基礎が必要なことを理解しましょう。
建物躯体への振動や騒音の伝搬防止
キュービクルに基礎を設ける理由のひとつは、振動や騒音の建物躯体への伝搬防止です。
ポンプや空調機などモーターを使用する設備と違い、キュービクルから振動や騒音が発生するというイメージがない方も多いでしょう。しかし、キュービクル内の変圧器(トランス)は意外なほど振動や騒音を発します。変圧器には大きな電流が流れるため、内部で発生する磁気ひずみにより電源周波数と連動した振動が起きるのです。
この振動や騒音が建物躯体に伝搬すると、他の部屋でうなるような音がするなどの影響が出るため、極力伝搬を防止する必要があります。
建物構造や防水層との切り離し
キュービクルの設置には固定用のボルトが必要です。しかし、建物の床面に直接アンカーボルトを打ち込むと構造体の強度に影響する場合があります。このため基礎を設けて建物構造と切り離すのです。
また、屋上などに設置する場合は、躯体の上に設けられた防水層を貫通することはできないため、基礎がなければボルトを設置することはできません。
基礎を設けておくことで、改修時に新たにアンカーボルトを打ち込む必要が発生した場合にも、建物構造を気にすることなく施工ができるのです。
さらに、基礎を設けることで、建物躯体へのキュービクルの荷重を分散させる効果があるなど、建物構造に与える影響を小さくすることができます。
キュービクル設置の強度を確保する
キュービクルは大きな重量があるため、その固定にはしっかりとした強度が必要です。固定に使用するボルトのサイズや埋込深さも、キュービクルのサイズや重量に基づいて選定しなければなりません。
すると建物床面のスラブ厚程度ではボルトの埋込深さが足りず強度が確保できないことになります。そこで、頑丈な基礎を設けることでキュービクル設置の強度を確保するのです。
また、屋外に設置する場合は基礎以外に固定する対象がなく、基礎の重量でキュービクルを固定することになるため、十分な大きさの基礎が必要となります。
電線・ケーブルのルートを確保する
電線・ケーブル類は多くの場合キュービクルの下面からキュービクル内に入ります。このため、キュービクルを基礎により床や地面から浮かせることで、電線・ケーブルが入るルートを確保するのです。
なお、基礎の電線・ケーブルの入口になる部分は、そのままにしておくと虫やネズミなどの侵入口となり、故障や事故の原因となるため、ネットなどを取り付けて侵入防止を行います。
水やホコリの侵入を防止する
電気設備にとって水は大敵です。屋上や屋外にキュービクルを設置する場合には、キュービクル内に水が浸入しないように対策が必要になります。基礎には、高さを確保することでキュービクル下面からの水の侵入を防止する役割があります。
また、ホコリも地面付近に多く滞留するため、高さを確保することは水だけでなくホコリの侵入防止としても効果があります。
キュービクルの基礎(架台)の構造
キュービクルを設置するための基礎はどのようなものでしょうか?
ここでは基礎の構造などを簡単に説明します。
コンクリート基礎
キュービクルの基礎の主流はコンクリートです。現場打ちのコンクリート基礎は、現場に合わせて大きさなどを決めることができ、建物と一体化するため強度が確保しやすく、施工費も安価であるなどのメリットがあります。
しかし、既存の建物に設置する場合には、建物に対しどのように接合させるかなどの問題もあり、コンクリート基礎以外の基礎が採用されることもあります。
コンクリート基礎の構造・配筋
コンクリート基礎は現場で型枠を組みコンクリートを流し込んで固めることで作られます。コンクリートはそのままでは強度が弱いため、中に鉄筋を入れて補強することが必要です。まれに鉄筋を入れないでコンクリートのみで施工される例もありますが、長い間使用しているうちに基礎が割れる原因となるため、きちんと鉄筋を入れた方が良いでしょう。
多くの場合は、建物の新築工事の際に床面と一体として作られるため、床の鉄筋と結束することで高い強度を確保することが可能です。
配筋に法的根拠はありませんが、各メーカーが推奨している参考図を確認し、構造検討を行って決定します。公共工事では「国土交通省大臣官房官庁営繕部監修 電気設備工事標準図」を元に13φまたはD13の鉄筋を縦横300mmピッチで配筋することが標準となっています。
ゲタ基礎とベタ基礎
コンクリート基礎の形状にはゲタ基礎とベタ基礎の2種類があります。
ゲタ基礎は履物のゲタを逆さまにしたような形の基礎です。長い基礎を2つ並べ、その2つの基礎にキュービクルを設置します。
ゲタ基礎では、キュービクルの下に空間ができ、キュービクル下面から電線・ケーブルを通すことが容易にできます。しかし、下面に大きな隙間ができるためネズミなどの侵入による故障や事故が起きやすく、ネットを設置するなどの侵入防止が必要です。
これに対し、ベタ基礎は全面が一体となっています。
ベタ基礎はキュービクル下部に空間ができません。そのため電線・ケーブル類が地面に埋設されているなど、基礎よりもさらに下から取り込む場合に採用されます。
乾式基礎・鋼製基礎
キュービクルの基礎はコンクリート基礎が主流ですが、後付けで設置する場合は建物躯体に与える影響の問題で設置が難しいことがあります。また、コンクリートがしっかりと固まって必要な強度が確保できるまでの養生期間が必要です。
コンクリート基礎が採用できないときは乾式基礎が使われます。乾式基礎は現場打ちのコンクリート(湿式)に対し、工場で生産した基礎を現地で取り付けるものです。乾式基礎の多くは鋼製で、鋼製基礎とも呼ばれます。
また、受変電設備では、変台と呼ばれる鋼製の基礎・架台もあります。これは変圧器を設置するための架台でキュービクルを設置するものではありません。変台には電柱の上に変圧器を設置する架台なども含みます。
乾式基礎は、既製品のパーツを組み合わせて使用する基礎と、鋼材を加工してくれる鋼材屋等で特注する製作品の基礎があります。既製品は比較的安価ですが、形状が決まっているため現場の状況に柔軟に対応することはできません。それに対し、特注の製作品では特殊な条件にも対応することが可能で見た目もきれいに納めることができます。
基礎の大きさ・高さ
キュービクルの基礎の大きさはキュービクルの大きさに対し、縦横200mm程度大きめに作るのが一般的です。キュービクルを設置したときに100mm程度基礎が出ることになります。
これ以上基礎が飛び出すとメンテナンスなどの際に邪魔になり、小さいとキュービクルを安定して設置できません。
高さはキュービクルを止めるアンカー長よりも高い必要があり、通常はアンカー長の2倍程度確保します。
また、基礎の大きさにより重量が大きく変わるため、建物構造から算出された床の耐荷重などの調整も必要です。
基礎工事には建築工事との図面調整が必要
一定規模以上の新築工事では、設計でも現場でも建築工事と電気工事の担当が分かれていることが一般的です。基礎工事は建築工事、キュービクルの設置は電気工事となるため、施工前に図面などで事前の調整を行う必要があります。
設計段階で建築図に記載されている基礎と、電気設備図に記載されている基礎が一致していないといったこともあるため、事前にしっかりと確認しましょう。
キュービクルの設置は工事の終盤ですが、基礎は躯体工事のため、工事の序盤から中盤には終わって強います。そのため、実際の工事では基礎の位置や形状はなるべく早い段階で確認し、間違いがないようにすることが重要です。
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