キュービクル用高圧避雷器とは?適用範囲や役割と合わせて解説

キュービクル用高圧避雷器は、高圧設備の雷対策に使われる機器です。落雷による電力系統の故障・不具合を防止するために設置されます。

この記事では、キュービクル用高圧避雷器について詳しく解説します。ほかにも、高圧避雷器の適用範囲や役割・効能、接地工事に関しても触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。

キュービクル用高圧避雷器とは

画像参照:【避雷器】アレスタ(LA)の仕組みや原理について ~ギャップや特性要素(ZnO)~ – 電気・計装・制御の勉強部屋 (denki-study.com)

6.6 kVキュービクル用高圧避雷器は、JISにて「雷、回路の開閉などに起因する過電圧の波高値がある値を超えた場合,放電することによって過電圧を制限して電気施設の絶縁を保護し、かつ、続流を短時間のうちに遮断して、系統の正常な状態を乱すことなく原状に復帰する機能をもつ装置。」とされています。

避雷器はその名の通り、高圧設備の雷対策に使われる機器です。落雷によって、PAS(期中負荷開閉器)やケーブルの引き込み口、CB(遮断器)、変圧器などの故障・不具合につながります。

中でも、PASは電力会社との責任分解点に設けられるため、電力会社の配電線路との延長線上にあり、誘導雷(落雷による電磁波が生じさせる電圧サージ)を受けやすい傾向です。そのため、自家用電気工作物の波及事故を防止するための対策として、PASの保護が重要であり、構内中第1号柱にあるPASには同柱に避雷器を設置して保護することもあります。

キュービクル用高圧避雷器の主要な仕様や機能、選定のポイント

キュービクル用高圧避雷器について、主要な仕様や機能、選定のポイントを以下の表にまとめました。これにより、高圧避雷器の特性や使用方法が理解しやすくなります。

項目内容
用途高圧電力設備(キュービクル)内の電圧サージ(雷サージなど)からの保護
設置場所キュービクル内の高圧受電盤に設置
動作原理雷サージなどの異常高電圧が発生した際に、電圧を地面に逃がし、設備を保護
種類酸化亜鉛形避雷器、ガス放電管型避雷器
定格電圧6.6kV、22kV、33kVなど、使用する電力系統の電圧に対応
制限電圧異常電圧を所定のレベル(例:8kVなど)まで制限し、電気機器を保護
放電容量通常10kA以上(雷サージを効果的に処理する能力)
応答時間極めて短い(ナノ秒~マイクロ秒単位)
耐久性数万回のサージに対応可能で、長期間使用が可能
設置環境条件屋内・屋外設置可能、防水・防塵対策が必要
メンテナンス定期的な点検が必要。外観の目視検査や動作確認テストを実施
特徴優れた耐雷性能、軽量・コンパクト設計
適合規格JIS、IEC規格に適合
選定ポイント使用電圧、放電容量、制限電圧、設置環境(湿度・温度)に応じて選定
設置の注意点適切な接地工事が必要。接地抵抗値は10Ω以下が望ましい
寿命通常10~15年程度。過酷な環境では交換が早まる可能性
導入コスト初期導入コストは設備規模やメーカーによるが、長期的な保護効果を考慮するとコストパフォーマンスは良好

この表は、キュービクル用高圧避雷器に関する基本的な情報をまとめています。高圧避雷器は、雷などによる異常高電圧から電気設備を守るための重要な機器です。適切な選定と設置により、キュービクルの安全性と信頼性を向上させることができます。また、定期的な点検やメンテナンスを行うことで、長期間にわたってその効果を維持することが可能です。

高圧避雷器の適用範囲

JISでは、キュービクル用高圧避雷器の適用範囲として、「JIS C 4620に規定する公称電圧6.6 kV及び定格周波数50 Hz又は60 Hzのキュービクル式高圧受電設備に用いる公称放電電流2 500 A又は5 000 Aの,酸化亜鉛形直列ギャップ付避雷器(以下,“高圧避雷器”という。)について規定する。」とされています。

酸化亜鉛形直列ギャップ付避雷器は、直列ギャップ及び非直線抵抗特性をもつ酸化亜鉛素子を磁器がい管などの絶縁容器に収容した避雷器のことです。酸化亜鉛素子(ZnO)を主成分とすると、放電時は大電流を通過させて端子間の電圧を制限し、放電した後は原状に復帰する作用を持つ避雷器となります。

高圧避雷器の耐電圧・放電開始電圧及び制限電圧

以下の表は、高圧避雷器の耐電圧・放電開始電圧及び制限電圧をまとめたものです。

項目公称放電電流:2,500A公称放電電流:5,000A
耐電圧(商用周波数電圧:実効値)22kV22kV
耐電圧(雷インパルス電圧:実効値)60kV60kV
商用周波 放電開始電圧 (実効値)13.9kV13.9kV
雷インパルス放電 開始電圧(波高値):標準33kV33kV
雷インパルス放電 開始電圧(波高値):0.5 μs38kV38kV
公称放電電流における制限電圧 (波高値)33kV30kV

ほかにも、絶縁抵抗や雷サージ動作責務などさまざまな規程が定められています。JISに規程されている内容を簡単にでも把握しておくとよいでしょう。

高圧避雷器の役割・効能

高圧受電設備では、系統電圧に応じた雷インパルス電圧(過渡的に短時間(通常,マイクロ秒単位からミリ秒単位程度)出現する電圧)や交流電圧に対して基準的な絶縁強度が定められています。

電気設備は、定められた絶縁強度や使用回路電圧に耐えられるよう絶縁設計が施されます。ただし、絶縁強度を脅かすレベルの雷サージや回路開閉時に起因する異常な過電圧が発生すると、絶縁破壊(絶縁状態が保てなくなること)による系統事故が生じる可能性がありま

す。

先ほど、高圧避雷器の耐電圧などを表でご紹介しましたが、簡単に言えば系統に生じる異常な過電圧を保護できるレベルに制限して電気機器の絶縁破壊を防ぎ、基準的な絶縁強度との協調を保つのが役割です。

そのため、異常な過電圧を大地に放電して過電圧を低減する、異常な過電圧が生じた際に系統電源から流入する電流を遮断して正常な系統状態に自動復旧する機能があります。

高圧避雷器の接地工事(アース工事)

電気設備技術基準改訂により、接地工事の種別はA・B・D及びC種に変更されました。電気設備技術基準に基づいて各種機器の設置が施されており、高圧避雷器に関してはA種接地工事を施すことが第37条にて定められています。

A種接地工事の接地抵抗は10Ω以下です。ただし、架空電線路(配電線路)においては、変圧器のB種接地工事から1m以上離隔したときに限り、30Ω以下にすればよいとされています。

接地抵抗が高いと、避雷器による保護効果が減少します。線路と大地間に生じる電圧は、避雷器の制限案圧と接地抵抗の電位上昇の和によって決まるためです。定められた接地抵抗値を満たすことはもちろん、できる限り10Ωよりもさらに低い接地抵抗とすることが大切といえます。

また、JISにて「避雷器用の接地端子は、外箱との絶縁・ほかの接地端子との離隔すること」とされています。

そもそもキュービクルとは

キュービクル(キュービクル式高圧受電設備)は、JISにて、キュービクルは「高圧の受電設備として使用する機器一式を一つの外箱に収めたもの」とされています。高圧の受変電設備を1つの金属製の箱に収めたものがキュービクルです。

JISで、キュービクル一式が規定されていることからも、一般的に流通している受電システムといえます。ここでは、キュービクルの適用範囲や内部に接地される機器を解説します。高圧避雷器と合わせて、キュービクルがどういったものかも把握しておきましょう。

キュービクルの適用範囲

JISでは、キュービクルの適用範囲として「公称電圧6.6kV、周波数50または60Hz、系統短絡容量12.5kA以下、受電容量4000kVA(力率0.8とすると契約電力で3200kW)以下の受電設備をキュービクルが使用できる範囲」とされています。

適用範囲にある公称電圧は、高圧受電の一般的な受電電圧と変わりません。系統短絡容量・受電容量に関しては、かなり大きな容量までキュービクルで受電できることがわかります。

契約電力に関しては、50kW以上となると電力会社から高圧受電の要請がされます。キュービクルであれば、受電電力3200kWまでと基準を大きく上回っていることも、高圧受電設備の多くがキュービクル式である理由につながっているでしょう。

実際、街にある高圧受電が必要な箇所の多くはキュービクルが設置されています。キュービクルは、建物の屋上や駐車場の隅などに設置されていることが多く、意識することで簡単に見つけられます。気になる方は、探してみるとよいでしょう。

まとめ

キュービクル用高圧避雷器は、落雷による電力系統の故障・不具合を防止するために設置されます。JISにて「雷、回路の開閉などに起因する過電圧の波高値がある値を超えた場合,放電することによって過電圧を制限して電気施設の絶縁を保護し、かつ、続流を短時間のうちに遮断して、系統の正常な状態を乱すことなく原状に復帰する機能をもつ装置。」とされています。

高圧避雷器によって、直撃雷や誘導雷からの被害を最小限に抑えられます。ほかの電気機器と合わせて避雷器がどんなものか把握しておくとよいでしょう。

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