キュービクルは、電気設備の中でも高額な設備です。また、必要な電気容量や機能、設置場所の条件などにより本体価格や設置工事費が大きく異なります。
そのため、キュービクルを設置する場合は、事前に見積もりを作成し、工事内容と金額を確認したうえで契約することが重要です。
この記事では、これからキュービクルの見積もりに取り組もうと考えている担当者の方に、その内容や方法を説明します。なお、この記事で取り扱う範囲はキュービクルの設置工事だけであり、その他の付帯工事は含めていません。
キュービクル設置工事の見積もりの内訳
キュービクルの設置に必要な費用は、主にキュービクル本体の価格と設置工事費の2つです。さらに、必要に応じて運搬費や仮設費、諸経費など、付随する費用が加算されます。
これらの要素を適切に積み上げることで、正確な見積もりの作成が可能となります。
依頼主に提出する見積もり書は、単に数字を並べるだけでなく、各項目の内訳や根拠を明確にすることが重要です。これにより、依頼主の理解を深め、潜在的な問題点や調整の余地を早期に発見することができ安心してキュービクルの設置を発注してもらうことができます。
キュービクル本体の価格
キュービクルは、建物の規模や用途、使用する電気設備などによって、必要な性能が決まります。まず、必要な電力量を算定し、キュービクルの規模を確定しましょう。
次に、設置場所の条件により、耐候性のある屋外用にすべきか屋内用でよいかといった箱体の構造などを判断します。また、「消防設備用の非常電源と使用する」、「太陽光発電設備を接続して系統連携を行う」など、必要な付加機能を確認します。
キュービクルの仕様は、新築の建物であれば電気設備の設計図に記載されているはずです。また、既存のキュービクルの更新であれば、現地で実際に設置されているキュービクルを確認し、同等品へ取り替えるケースや、数十年目に設置した状況と現在の負荷状況や追加設備などに差異があり、それに伴い適正な設計が必要な場合もあります。
いずれのケースでも、仕様に間違いがあると見積もりが実際の価格と乖離してしまうため、慎重に確認するようにしましょう。
メーカー見積もりの取り方
キュービクルは、メーカーの工場で生産されますが、一部簡易なものを除き、1台ずつ仕様が異なる受注生産品です。そのため、正確な価格を出す場合はメーカーに見積もりを取る必要があります。
設計図などであらかじめ仕様が決められている場合や、既存キュービクルの仕様書が残されている場合であれば、それらの資料をメーカーに渡して直接確認してもらうことで比較的簡単に見積もりを依頼することができます。
しかし、キュービクルの仕様検討・設計から依頼される場合や、既存図面のないキュービクルの更新を行う場合もあるでしょう。そういった場合は、設置するキュービクルの仕様に間違いがないように慎重な調査が必要です。
キュービクルの仕様を確定させるためにチェックすべきポイントはとても多くあります。
- 電灯電力(単相3線式100/200V)の必要電気容量
- 動力電力(三相3線式200V)の必要電気容量
- 動力設備の力率改善の必要性と適切なコンデンサ容量
- 低圧側の回路構成
- 保護装置(雷保護など)付加の必要性
- 屋外・屋内、耐候性の有無など設置場所の条件
ここにあげたポイントは基本的なものです。実際には高圧側の遮断機の仕様を決定したり、デマンド制御など様々なオプション機能の有無を確認したりと、さらに検討すべき事項があります。
設計図がない場合は、調査・設計段階からメーカーに技術協力を依頼しキュービクルの図面を作成してもらう方法もあります。企業として経験やノウハウがない場合は、無理をせずメーカーに相談してみましょう。
キュービクルの相場
キュービクルの正確な価格は、メーカーに見積もりを取る必要があります。しかし、商談の初期段階で概算金額を聞かれるといったケースもあるため、相場を把握しておくとよいでしょう。
一般的なキュービクルの相場は100kWあたり200万円程度です。最大電気容量100kWであれば約200万円、200kWであれば400万円といったイメージです。
最大電気容量 | 相場価格 |
100kW | ~200万円前後 |
300kW | ~600万円前後 |
500kW | ~1,000万円前後 |
ただし、この相場は特殊なオプション機能(リアクトル、力率調整、ダブルスロー、乾式、等々)がない基本的な仕様のキュービクルを想定しています。キュービクルは仕様によって価格が異なるため、最大電気容量だけで正確な価格を算出することは不可能です。依頼主に相場価格を伝える場合は、この点に十分注意してください。
設置工事費の見積もり
設置工事費は、キュービクル設置の見積もりで、本体価格の次に大きな割合を占めます。メーカーに確認すれば正確な価格が出る本体価格と違い、設置工事費は自社で決定する必要があり、企業ごとのノウハウが発揮される部分です。
設置工事費は、現場の条件などにより大きく変わるため一概に言えない部分もありますが、基本的な考え方を説明しますので参考にしてください。
設置工事費は必要な人工と機材で決まる!
設置工事費で最も大きな金額を占めるのは、なんといっても人件費です。キュービクルの搬入や据付、内部機器の組み込みや電線・ケーブル類の接続など、キュービクルの設置に必要な様々な作業を行う人の費用ですね。
人件費は基本的には国土交通省や電設協会発行などの電気工事に特化した積算単価表を用いて積算(見積もり)していきますが、設計上明白な使用部材の他に、各々の現場状況により積算資料に載っていない現場状況を積算しなければならない場合も多々あります。
その場合は設計や積算した担当者の実績や経験値、会社の方針などにより、実際の労務費に合うように労務単価に掛ける掛け率を増減する必要性が求められます。
また、今までの経験や実績をもとに、推計的に人工の積み上げで計算する方法もあります。
設置工事に何日(何時間)の工事が必要で、1日あたり何人の作業員が必要かを考えます。
しかしこれには相応の経験値が必要になります。
例:積算資料での見積もり(積算)の場合。
価格はあくまで想定で、サイズや設置場所に環境、日中夜間平日休日などにもよります。
工程 | 工数 | 数量 | 人工 |
キュービクルの搬入 | 3.6 | 1式 | 180,000 |
キュービクルの据え付け | 3 | 1式 | 150,000 |
内部機器の組み込み、電線等の接続 | 3.9 | 1式 | 195,000 |
停電用仮設工事費 | 1.5 | 1式 | 75,000 |
キュービクル運搬費 | 1式 | 別途 | |
ラフタークレーン費 | 1式 | 別途 | |
耐圧リレー試験費 | 1式 | 別途 | |
現場経費(交通費や仮設費等現場により) | 1式 | 別途 | |
諸経費 | 1式 | 別途 | |
合計 | 1式 | 600,000 |
工数については原価計算にのみ記載し、実際のお見積書には記載しない。
例:人工での見積もり(積算)の場合。
価格はあくまで想定で、サイズや設置場所に環境、日中夜間平日休日などにもよります。
工程 | 作業日数 | 人数 | 人工 |
キュービクルの搬入 | 0.5日 | 6人 | 3人工 |
キュービクルの据え付け | 0.5日 | 6人 | 3人工 |
内部機器の組み込み、電線等の接続 | 1日 | 4人 | 4人工 |
調整 | 1日 | 2人 | 2人工 |
キュービクル運搬費 | 1式 | 別途 | |
ラフタークレーン費 | 1式 | 別途 | |
耐圧リレー試験費 | 1式 | 別途 | |
現場経費(交通費や仮設費等現場により) | 1式 | 別途 | |
諸経費 | 1式 | 別途 | |
合計 | 1式 | 12人工 |
例えば、上の表のような工程と作業量であれば、人工の合計は10人工になります。仮に労務人工を25,000円だとすると、直接工事に関る作業員の人件費は25万円です。
これが人件費の基本的な考え方です。しかし、上記にも触れましたが、実際に必要な人工はキュービクルの規模や設置作業の内容により大きく異なるため、しっかりとした事前調査が必要です。上の表は比較的コンパクトなキュービクルを設置する場合の例なので、条件によっては数倍~十数倍の人工が必要となることもあります。
また、人力での作業の他に、クレーンなどの重機や電動リフトが必要な場合は、これらの機材費も発生します。
クレーンなどの重機や大型のリフトなどは自社で所有しておらず必要なタイミングでリースするケースが多いでしょう。その場合は、リース会社の価格を確認し、見積もりに含めるようにします。仮に自社で所有している場合も機械損料(重機の購入費、維持費など)を見込んでおく必要があります。
クレーンなどの重機は、機材だけでなく操縦を行うオペレーターの派遣が必要なケースもあるので注意しましょう。
搬入作業に必要な人工と機材
キュービクルの設置工事で、現地の状況により大きく差が出る工程のひとつが搬入作業です。
キュービクルを設置する場所が屋外にあり、キュービクルを運んできたユニック車のクレーンでそのまま基礎の上にキュービクルを降ろすことができるような場合であれば、そもそも敷地内での運搬は発生しません。
しかし、屋内の電気室に設置する場合であればそうはいきません。屋内の搬入ルートを、電動リフトやローラーなどの比較的簡易な機器と人力で運搬する必要があります。そのため、設置場所に搬入するだけでも時間と人数が必要となり、人工が高くなります。
また、屋上に設置する場合には、大型のラフタークレーンで荷揚げを行うため、リース会社にクレーンのリースとオペレーターの派遣を依頼することになるでしょう。
このように、搬入作業の内容と必要な費用は、設置場所の条件で大きく異なるため、見積もりの際には必ず確認しておく必要があります。
据付作業に必要な人工と機材
キュービクルの設置工事で、搬入作業についで現地の状況により大きく差が出る工程として、据付作業があります。大型で重量のあるキュービクルを基礎の上に設置する作業です。
搬入作業と同じく、キュービクルを運んできたユニック車のクレーンでそのまま基礎の上にキュービクルを降ろすことができるような場合であれば、それほど難しく考える必要はありません。
しかし、屋内では重機が入っていけないため、人力による据付が必要です。特に重量のある機器は人力で持ち上げることが困難なため、油圧ジャッキなどを使用して基礎の高さまで持ち上げてスライドさせて基礎に乗せるなど、複雑な手順が必要で据付に時間がかかるケースもあります。
また、屋内でも使用できるカニクレーンなどの小型クレーンを使用する方法もありますが、その場合はキュービクル本体だけでなく使用する機器の搬入にも労力がかかります。
このように、同じサイズのキュービクルであっても、設置する場所の状況や使用できる機材により、据付作業の作業内容や必要な費用は大きく異なるため、見積もりの際には必ず確認しておく必要があります。
B材・C材の費用
電気工事では、工事に使用する機材がA材・B材・C材に分類されます。A材は照明器具や分電盤などの機器のことで、キュービクルもA材に含まれます。B材は電線やケーブル、配管など機器類以外の主要な材料のことです。C材はビニールテープやビスなど、B材よりもさらに消耗品に近い材料を指します。
使用する機材の費用では、A材が最も大きな金額になりますが、B材やC材もまとまると無視できない金額となります。ここまで機材費としてはキュービクル本体の費用のみを考えてきました。しかし、実際にはキュービクル本体以外にも、B材・C材にあたるこまごまとした材料が必要です。
キュービクルの設置に使用するB材は、主に電線やケーブル、高圧ケーブルの端末処理剤などでしょう。これらは、使用する予定の数量を図面などの資料から拾い出し、見積もりに含めるようにします。
C材は、正確な数量を見込むことは困難で非効率なため、雑材消耗費として少額を計上したり、諸経費の一部として処理したりする方法が一般的でしょう。
その他の費用
キュービクルの設置に必要な費用は、ここまで紹介したキュービクル本体の価格と設置工事費以外にも存在します。
ここでは、キュービクルの見積もり作成に、本体の価格と設置工事費以外にどのような項目が必要か説明します。
送料・運搬費
キュービクルは工場で製作したものを現地に運搬して設置します。もちろん大型の機器であるため宅急便で送るというわけにはいきません。トラックやユニック車をチャーターして運搬を依頼する必要があります。
キュービクルメーカーの見積もりで現地引き渡しとなっている場合は運搬費も含まれていると考えられますが、別途手配する必要があるケースもありますのでしっかりと確認しておきましょう。
電力会社・官公庁への申請費用
キュービクルの設置には、電力会社や官公庁への申請が必要です。
依頼主側の電気主任技術者が実施する場合もありますが、工事の一環として依頼される場合もあります。申請手続きを引き受ける場合は手数料を見積もりに含めるとよいでしょう。
諸経費
すべての工事に言えることですが、実際の工事に掛かる費用だけでは企業運営はできません。
依頼主との交渉や調整を行う営業担当者や現場管理を行う施工管理担当者の人件費なども必要です。また、会社を運営するための費用も各工事の粗利の中から捻出していく必要があります。
これらの単純に積み上げることができない費用を諸経費として計上します。諸経費は会社の体制などにより変わるため一律いくらとは言えません。会社の体制や経営方針を考慮して決定する必要があるでしょう。
撤去費・処分費
既存のキュービクルを更新する場合は、古いキュービクルの撤去や処分の費用も見込む必要があります。古いキュービクルを設置場所から取り外し搬出する作業は、新しいキュービクルを搬入し据え付けるのと同程度のコストがかかります。
また、撤去したキュービクルを廃棄する場合は、産業廃棄物として適正に処分する必要があります。古い電気機器にはPCBなどの有害物質が含まれていることがあり、その調査や実際に有害物質が含まれていた場合の処理には高額な費用がかかるケースもあります。
撤去工事が必要な場合は、撤去・処分にかかる費用も適切に見込むように注意しましょう。
キュービクルの見積もりは慎重に!
キュービクルの見積もりは、多くの要素を考慮する必要がある複雑な作業です。適切な見積もりを行うためには、現場の状況を十分に調査する必要があります。設置場所の寸法、搬入経路、既存設備との干渉、電力会社の供給設備の状況など、細部まで確認しましょう。事前の詳細な調査は、工事中の予期せぬ問題や追加コストを防ぐ鍵となります。
メーカーからキュービクル本体の見積もりをとる際には、複数の見積もりを比較検討することも有効です。ただし、単純な価格比較ではなく、仕様の違いや各社の強み・弱みを総合的に評価しなければなりません。
その他にも、隠れたコストがないか、細心の注意を払って確認する必要があります。例えば、既存設備の撤去費用、仮設電源の費用、試運転調整費用、官公庁への申請費用など、見落としがちな項目もあります。必要な費用を見落としていると、追加費用により赤字になる恐れもあるのです。
多くの見積もり作業を経験することで、ノウハウが蓄積され、より早く正確な見積もりができるようになっていきます。しかし、経験が浅いうちは大きな金額の乖離がないよう、工程表や手順書を書き出してみるなど、単に頭の中で考えるだけでなく慎重に対応することをおすすめします。
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