キュービクルは、工場、オフィスビル、商業施設など、大規模な電力を必要とする場所では欠かせない存在です。建物の建設時以外にも、中古物件を購入して改修する場合や、スケルトンの賃貸店舗に入居する場合など、様々なケースでキュービクルの設置や交換が行われます。
キュービクルは長期にわたって使用される設備であり、その選択は企業や施設の電力供給に大きな影響を与えます。そのため、初期投資だけでなく、長期的な運用コストや将来の拡張性も考慮に入れる必要があります。
この記事では、キュービクルの設置や交換を考えている方々に向けて、本体価格、設置費用、納期などをわかりやすく解説します。これらの知識を得ることで、より適切な意思決定を行い、効率的かつ経済的なキュービルの導入や更新が可能になるでしょう。
なお、具体的な相場や見積もりの取得については別の記事でも説明していますので参考にしてください。
キュービクルの設置にかかる費用
キュービクルの本体価格や設置工事費といったキュービクルの設置にかかる費用は一般的な知識とは言えません。まずは、それぞれの一般的な値段を知る必要があります。
キュービクルの設置費用は様々な要因によって変動しますが、ここではその内訳と影響要因、そして概算の費用範囲について説明します。
キュービクル設置費用の内訳
キュービクルの設置費用は、大きく分けて以下の項目で構成されています。
- キュービクル本体の価格
- 設置工事費
・基礎工事:キュービクルを設置するための基礎やアンカーボルトの設置など
・搬入・据付工事:キュービルの設置場所への搬入や基礎への据付など
・配線・電気工事:高圧ケーブルの敷設、低圧配線、接地工事など - 設計費:事前調査、電気設計、図面作成など
- 申請費用:電力会社への申請、官公庁への各種届出費用など
- 諸経費:現場管理費、一般管理費、技術経費など
設計費や申請費用が設置費用に含まれるかどうかは発注方法や契約内容によるので事前に確認しましょう。
キュービクル設置費用が変動する要因
キュービクルの設置費用の多くを占めるのは本体価格と設置工事費です。そのため、この2つの価格が決まれば概算の費用がわかると言えます。この、キュービルの本体価格と設置工事費は、以下のような要因によって大きく変動します。
- キュービルの容量・仕様
・一般的に、容量が大きいほど費用も高くなります。例えば、300kVAのキュービルと1000kVAのキュービルでは、後者の方が大幅に高額になります。
・キュービクルには、受変電の他に様々な機能を付加することができます。また屋外設置・屋内設置などでも仕様や価格が異なります。 - 設置場所の状況
・屋内の奥まった場所など、大型機器の搬入や設置が困難な場所では搬入にかかる費用が増加します。
・クレーンが入れない場所に人力で据付を行う場合など、設置に手間がかかる場合は費用が増加します。 - 工事の複雑さ
・既存の建物に設置する場合、調整作業などが必要になり、費用が上がることがあります。
・建物の構造や他の設備との干渉により、特殊な施工が必要になる場合があります。 - 特殊仕様の有無
・高い耐震性能が求められる場合、補強工事や免震構造にするなどの追加費用が必要になります。
・キュービクルが発する騒音の対策を行う場合は追加費用が必要となります。
・海に近く塩害対策が必要など、特殊環境下で使用する場合、追加の防水・防塵対策を行うと本体価格が増加します。
概算の費用範囲
キュービルの設置費用は、上記の要因によって大きく変動しますが、一般的な価格帯は以下のようになります。
最大電気容量 | 参考規模 | 価格帯 |
50~100kVA | コンビニ、飲食店など | 300万円~800万円 |
200~300kVA | 小規模の施設、スーパー | 600万円~1,500万円 |
500kVA以上 | 大型スーパー、工場など | 1,200万円~3,000万円 |
これらの金額はあくまで目安であり、実際の費用は個々のケースによって大きく異なる可能性があります。例えば、都心部の狭小地に大容量のキュービクルを設置する場合、上記の金額を大幅に超える可能性があります。
一方で、標準的な仕様で、設置条件が良好な場合は、これらの価格帯の下限に近い値段で設置できることもあります。
この他にも、様々な要因が考えられるため、実際の価格を知るには専門業者による調査・見積もりが必要です。適切な工事内容や価格を知るためには、複数の業者から見積もりを取得し、見積もりの内容を比較することをおすすめします。
キュービクルの交換費用
既存のキュービルを交換する際の費用について、必要となる項目や新設との値段の比較について解説します。
キュービクル交換で必要な項目
キュービルを交換する工事は、新設工事と同じ項目に加え、以下の作業や費用が必要になります。
- 撤去費用
既存キュービルの撤去と処分にかかる費用です。解体作業の他に搬出作業や産業廃棄物の処理費用などが必要となります。 - 仮設費用
交換工事中の仮設キュービルが必要な場合の費用です。長時間停電できない施設では、工事期間中の電源供給のため仮設キュービルを設置します。なお、仮設キュービクルはリース品の利用が一般的です。 - 改修工事費
既存の基礎や配線を新しいキュービルに合わせて改修する費用。新しいキュービルの寸法や仕様に合わせて、基礎の補強や配線の引き直しが必要になることがあります。
キュービクル交換の新設との費用比較
キュービルの交換費用は、一般的に同規模のキュービクルを新規に設置するよりも、概ね10~20%程度高くなります。これは主に既存キュービクルの解体や処分が加わるためです。さらに仮設キュービクルを設置する場合は、仮設用のキュービクルのリース費や、仮設工事費も必要です。
既存の設備や建物の状況によっては、さらに高額になることもあります。例えば、基礎の劣化が見つかった場合は補強工事を行ったり、キュービクルの搬出・搬入に周辺設備の移動が必要になったりというケースが考えられます。
また、撤去したキュービクルに有害物質であるPCBが含有している場合は、自治体への届け出や法令に基づいた処分が必要です。このようなケースでは、通常よりも煩雑な手続きや高額な処理費用が必要となります。
ただし、交換には新設よりも安くなる要素もあります。既存の基礎や配線がそのまま利用できる場合は、その分のコストが不要です。また、設置場所や配線ルートが既に確保されているため、設計や調整にかかる時間を短縮できる可能性もあります。
このように、キュービクルの交換は新設以上に価格が変動する要因が多いため、専門業者に見積もりを依頼する場合は、しっかりとした事前調査を行ってくれる業者に依頼しましょう。
キュービクルの納期と設置工事期間
キュービルは、一部の簡易なものを除き、受注生産品です。そのため、発注から制作、納品までは一定の期間が必要です。ここでは、標準的な納期、納期に影響を与える要因、そして短納期対応の可能性について解説します。
標準的なキュービクルの納期
キュービルの標準的な納期は、一般的に以下のとおりです。
- 標準仕様の場合:1~3ヶ月
- カスタム仕様の場合:3~6ヶ月
ただし、これはあくまで目安であり、実際の納期は様々な要因によって変動します。注文が集中している、使用する部品が入荷しないなどの事情によりさらに納期が長くなる場合もあります。
交換するキュービクルが標準仕様で対応できるか判断できない場合は、キュービクルの納期に6ヶ月かかる前提で検討を進めると確実でしょう。
キュービクルの制作には時間がかかるので、納期は早めに確認し余裕を持った計画を立てることが重要です。また、納期遅延のリスクを最小限に抑えるためにも、早めの発注と関係者間の緊密なコミュニケーションが欠かせません。
短納期対応の可能性と追加コスト
納期はメーカーによっても異なります。また、同じメーカーでも受注状況によってもその時々で納期が変動します。そのため、納期を短縮したい場合は、複数のメーカーに確認するようにしましょう。
故障などで緊急を要する場合は、短納期での対応が可能な場合もあります。ただし、通常はこれに伴い割増料金の支払いが必要です。そのため、追加コストと納期短縮のメリットを比較検討し、最適な選択をすることが重要です。
短納期対応が困難な場合、仮設キュービクルを利用するなどの方法によって対応できる可能性もあります。
キュービクルの設置・交換にかかる工事期間
新規にキュービクルを設置する場合の工事期間は、通常1~2週間程度です。しかし、既存キュービクルを交換する場合は状況によって大きく異なります。
停電可能な環境で、既設キュービクルと同じ仕様のキュービクルにそのまま交換するだけであれば、2~3日程度で完了することも可能です。しかし、停電が許されない環境であれば、仮設キュービクルを設置するため、その分工事期間が長くなります。
さらに、営業日は工事ができないため作業は土日のみといった制限がある場合は、工事が長期化することになります。また、既存の設備が劣化していることにより追加工事が必要になるなど、想定外の要因によって工事期間が延長されることもあります。
工事期間は、周囲への影響も大きいため、施工会社と事前にしっかりと打ち合わせを行い、しっかりとした工程計画を作ることが重要です。
キュービクルの設置・交換は専門家に相談を!
キュービルの設置・交換は、企業や施設の電力供給に直結する重要な投資です。この記事で紹介した情報を参考にしつつ、専門家のアドバイスも取り入れながら、最適な選択を行ってください。
実際にキュービクルの設置・交換を検討する場合は、専門業者に調査や見積もりの作成を依頼し、価格や工期を確認したうえで発注を行うようにしましょう。
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各社の特色として、価格はもちろんですが、現状の必要電力量に対して必要最低限の設計にして安くする方法や中古機器を利用することでさらにコストにフォーカスする設計、 また施設によっては将来的な機器の増設や減設を踏まえたコストオフな設計や、施工後の将来の安全性を考慮して工事実績が豊富な業者を探すこともでき、各種受変電設備やキュービクルに関してご依頼のお客様の理想的な専門業者を探すことができます。